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TOWNS開発環境の価格について

TOWNSでの開発が盛り上がらない理由としてしばしば指摘されるものとして「開発環境が高価であったため、開発者の数が少なかったから」というものがある。もちろん実際にはフリコレ[1] が半年ごとに発売される程度にはアマチュア開発者もいたので当のTOWNSユーザからすると「えっ?」となるわけだが、開発環境が当初高かったのも事実ではある。

ただ、その後段階的に価格は下げられているため、上記の指摘は必ずしも該当しないとも考える[2]。では実際にいくらだったのか?というのをまとめてみようと思った次第。なお、標準的な開発環境であったHigh Cの開発環境のみについてである。

1. TOWNS発売当初

TOWNSの標準OSであるTowns OSはMS-DOSベースだがコンソール[3]を持っていなかった。そのため、コンパイル時のメッセージなどを表示させるために別途MS-DOSが必要だった[4]。また、High Cにはリンカ[5]が付属していなかった[6]ため、リンカを含む386 ASM TOOL KITが必要だった。さらに、当時のDOSにはフルスクリーンエディタは付属していない[7]ため、テキストエディタを別途購入する必要があった。

加えて、ハードディスクが必須であり、さらに初代TOWNSはSCSIを内蔵していなかった。結果として、標準的なTOWNSセット(本体+モニタ+キーボード+Towns OS)に加えて以下のものが必要だった。以下の価格は特に記載がなければ標準小売価格である。

  • SCSIカード: 30000円

  • 外付HDD: 180000円(システムサコムの45MBモデルの1989年11月頃の標準小売価格)

  • MS-DOS: 18000円

  • High C V1.4: 40000円

  • 386 ASM TOOL KIT V1.1: 80000円

  • テキストエディタRED2[8]: 38000円

標準小売価格だけならなんと38万6000円となってしまう。1989年11月発売の2代目からSCSI内蔵となるがそれでも35万6000円である。実売価格が3割引だとしても24万円弱、ということになる。本家High Cは1000ドル(当時のレートは1ドル130円前後)近い価格だったらしく、FM版はこれでもかなり安くなっている。ちなみに他機種用C言語だと、Microsoft Quick Cが22000円、ボーランドのTurbo Cが39800円、X68k用のC Compiler PRO68K(通称XC)が39800円、Microsoft Cは9万円台である。

2. 1990年12月以降

High Cだけで実行ファイルが作れない、というのは流石に不満が多かったのか、1990年12月のレベルアップ(V1.4L20)でリンカが付属するようになりHigh Cだけで実行ファイルが作れるようになった[9]。また、これまでリアルモードプログラムだったコンパイラ、リンカがネイティブアプリとなった(インストール時にリアルモード、ネイティブモードのどちらか一方のみを選択する。ライセンス上両方をインストールできないらしい)。Oh!FM 1991年2月号の記載によれば、ネイティブアプリとなってコンベンショナルメモリの制約から解放されたことで、make[10]が使えるようになったり、大きなソースコードを分割コンパイルせずにコンパイルできるようになったり、未保証だがフリーのコンソールエミュレータであるORICON(フリコレ2、3に付属)を使えばDOS無しでも動作するようになった。SCSIハードディスクも値下がりしている。

また、TOWNSネイティブのフリーのテキストエディタとしてWink[11]が登場しており、エディタを購入する必要もなくなった。

  • 外付HDD: 実売92000円(システムサコムの45MBモデルの1990年12月頃の価格)

  • High C V1.4: 40000円

実売で12万円程度、といったところか。

(2024/9/3追記)Oh!誌によれば、サポート外だがフロッピーベース(要2ドライブ)での運用も可能であるとのこと。(追記終わり)

3. 1992年頃

1991年11月にはTowns OSもV2.1となりコンソールが標準でついてくるようになったため、正式にDOSは不要となった。また、V2.1の機能拡張に合わせ、High CもV1.7にバージョンアップされている。Oh!FM 1992年3月号の記事によれば、V2.1のTBIOS[12]対応の他、標準ライブラリの強化(V1.4の189関数に対して500関数)などがなされている。加えて、V2.1のサイドワーク[13]や、かな漢字変換、TIFFファイル用のライブラリを収録した拡張ライブラリI(19800円)や、GUIアプリ[14]を開発するための拡張ライブラリII(39800円)も別途提供されるようになった。

外付けHDDももう少し安くなり、40MBクラスのHDDとHigh Cのセットなら10万円を切るくらい、拡張ライブラリIをつけるなら12万弱、といったところのようだ。

なお、フリーのCコンパイラを提供するGNU for TOWNSも92年頃には配布されるようになっており、こちらはハードディスクなしでの運用も可能だった。

4. 1994年6月以降

1994年6月頃より「High C Compiler マルチメディアキットV1.7L12」が提供されるようになった。これまでHigh Cや拡張ライブラリはフロッピーで提供されていたが、CD-ROMベースとなった。そして拡張ライブラリI、II、JPEGサポートライブラリ、LiveMotion[15]サポートライブラリ、ビデオライブラリなども同梱し値段は40000円で据え置き(これを旧バージョンで揃えるとHigh C本体含め計237200円だとか)という低価格化を実現した。また、CD-ROMベースとなったことでHDDなしでの運用も可能となった。もっとも、この頃になるとHDDは200MBクラスで40000円以下であり、開発をしなくても持っていて当然という時代である。


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