TOWNS for Gaming
- 公開日: 2024/04/13
- 更新日: 2024/04/13
FM TOWNSは8ビットホビー機であったFM77AVシリーズの後継機である。当時の8ビットホビー機の主用途はゲームであり、TOWNSにとってもゲームは重要な用途であった。ゲーム機としてのTOWNSの特徴は以下の通りである。
グラフィック性能
TOWNS発売当時の主要PCのグラフィック性能は以下の通りである(ゲームで使用する機能に限定)。
PC-9801VM/UV[1]
テキスト80x25キャラクタ
キャラクタごとに8色の色を指定可能
背景色は設定不可だが色反転は可能(文字部分が背景色になる)
点滅、下線、縦線を追加可能
縦方向にドット単位でスクロール可能
グラフィック画面と重ね合わせ可能
グラフィック640x400ピクセル
ピクセルごとに4096色中16色
プレーンアクセス方式
複数プレーンへの同時書き込み可
AND演算可
X68000[2]
テキスト仮想画面1024x1024ピクセル
PC-9801とは異なりビットマップ画面
プレーンアクセス方式
表示可能サイズはCRTCの設定次第(グラフィック画面と同じサイズ)
色は65536色中16色
複数プレーンへの同時書き込み可
グラフィック仮想画面1024x1024ピクセル又は512x512ピクセル
パックトピクセル方式
1024x1024ピクセルの時は65536色中16色固定
512x512ピクセルの時は65536色中16色/4スクリーン、65536色中256色/2スクリーン、65536色/1スクリーンを選択可
パレットは全スクリーン共通
各スクリーンとテキスト画面との重ね合わせ可
スクリーンごとにスクロール可
BG(最大2画面)、スプライト1画面あり
画面全体で65536色中256色のパレットが使用可能で、この256色中16色を各スプライト、BGが使用可能
BG、スプライトのプライオリティは任意に設定可能
PC互換機(EGA, Tandy)
320x200ピクセル 固定16色
テキスト画面との重ね合わせ不可
TandyではCPU処理能力上160x200が使用される場合が多い(EGAでは320x200モードを使い左右に隣接する2ピクセルの色を同色にして見かけ上160x200としてふるまう)
26万色中256色のVGA対応ゲームが出始めるのはTOWNS発売後の90年後半ごろから
Mac
モノクロ2色又は1600万色中256色
ウィンドウシステムなので解像度は規定されないが、モノクロの場合は512x384ピクセル、カラーの場合は640x480ピクセルで動作するよう設計される。
AMIGA[3]
320x200(NTSC)又は320x256(PAL)、4096色中最大32色
プレーンアクセス方式
1024x1024ピクセルの仮想画面あり
二画面に分けて重ね合わせも可能(画面ごとに最大4096色中8色)
制限があるが4096色同時表示も可能
スプライト機能あり
ATARI ST[4]
320x200, 512色中16色
16ピクセルごとの変則プレーンアクセス方式。16ピクセルのプレーン0,1,2,3が連続してアドレスされ、次の16ピクセルのプレーン0…と続く
これに対してTOWNSのグラフィック性能は以下の通り。X68000が別格レベルだがそれ以外の機種に対しては次世代機(PC VGAやPC-9821)と比べても優秀だ。また、X68000を除く各機種に対して等価か上位互換となる画面モードを持っており、移植を行いやすいというのも強みだ。さらに、他機種にない特徴として異なる解像度の画面の重ね合わせができるというものがある。
(1)640x480ピクセル,1600万色中256色、(2)640x480ピクセル, 4096色中16色、(3)320x240ピクセル, 32768色など
(2)同士、(3)同士、(2)と(3)の2画面重ね合わせが可能
画面ごとにスクロール、拡大表示可
制約もあるがスプライトも可能
サウンド機能
TOWNSのサウンド機能は4-op ステレオ(方向は左・中央・右の3パターン)のFM音源を6ch(ヤマハYM2612)、8ビットステレオ(前方16方向)のPCM音源を8ch(リコーRF5C68、最大サンプリングレート20kHz、チャンネルごとに音程を変更可能)と当時としては強力だ[5]。同時期の各機種のスペックは以下の通り。
PC-9801(26音源): 4-op モノラルFM音源3ch、SSG 3ch、ノイズ1ch(ヤマハYM2308)/ [6]
X68000: 4-op ステレオFM音源8ch(ヤマハYM2151)、ADPCM 1ch
PC: 2-op モノラル9ch[7]
Tandy1000: SSG (TI SN76489)モノラル3ch
Mac: 8ビットモノラルPCM(サンプリングレート22.25kHz)
AMIGA: 8ビットモノラルPCM(サンプリングレート約28kHz)4ch[8]、音程変更可
ATARI ST: SSG 3ch(ヤマハYM2149[9])、MIDI端子内蔵。後継機のSTEでは4ch ステレオPCM(NSのLMC1992。サンプリングレート最大50kHz。左右それぞれ4ch)追加。
ただしPCM音源は波形メモリが64kBと小さいため使いこなすのはやや難しい。
FM音源を6chステレオにし、48kHz16ビットステレオPCM音源を追加したいわゆる86音源は1993年発売
1987年発売のAdlib Sound Card。次世代標準のSound Blaster Proは1991年発売。ハイエンドゲーマー向けにRoland MT-32に対応したゲームも多かった。ハイエンド向けのGravis UltraSound[10]は1992年発売
2chステレオとすることも可能
MSXなどで採用されたGI AY-3-8910の互換チップ。
44kHz 16ビット 8chのステレオPCM音源。波形メモリは標準256kB。
32ビットアーキテクチャ
この当時のPCや98用ゲームは8088やV30でも動作するよう設計されていた。インテルの16ビットCPUは連続してアクセスできるメモリ空間が1セグメント64kBという制限があり、16MBのメモリ空間を持つモトローラ68000を採用したX68000、Mac、Amiga、Atari STと比較ひるとグラフィック処理には向いていなかった。これに対してTOWNSは32ビットCPUである80386と、このCPUを32ビットモードで動作させるDOSエクステンダを採用していた。80386は連続してアクセスできるメモリ空間が4GBと当時としては非常に広く、ビデオメモリ全体を1セグメントに収めることが可能で、高速なグラフィック処理が可能だった。
TOWNSはコストダウンのためかメモリウエイトがかかる[11]という欠点があったが(同時期のPCや98の386モデルはノーウエイト)、その代わりゲームが32ビットコードで動作するためその動作速度は同じ386 16MHzのPCや98と比べて高速であったようだ[12]。
また、発売当初こそ標準搭載メモリは1M(上位モデルは2M)だったが、すぐに2Mモデルが最低ラインとなり、富士通製のゲームも90年には要2Mとなった。国内多機種ではPC-9801が640kB、X68000が1Mでの動作保証が必要であったことを考えると余裕があった。
互換モードで3ウエイト。1991年発売のCXよりノーウエイトとなった。未保証だが初代TOWNSでもI/O操作によって1ウエイトまで落とすことは可能だった。
1990年に雑誌対抗ポピュラス大会をイマジニア(国内PCを販売した会社)主催で行ったが、当初PC-9801RAで行っていたところログイン読者代表の手数があまりにも早すぎて処理落ちが発生し、急遽TOWNSに入れ替えたという話があったとか。
CD-ROM
TOWNSはCD-ROMドライブを世界に先駆けて標準搭載した。他機種がグラフィックを何とか1MBのフロッピーに圧縮して保存するために苦労していたのに対し、TOWNSはそのあたりを気にせず沢山のグラフィックと音声を詰め込むことができたというのは大きかったと思う。また、CDオーディオをBGMとして使えるというメリットもあった。
TOWNS用ゲームの特徴
以上のように、TOWNSをゲーム機としてみると
(X68000以外の)他機種と上位互換となる、表現力の高い豊富な画面モード
低解像度多色画面と、高解像度画面との重ね合わせが可能
高速なCPUと大容量メモリ
ストレージ容量を気にしなくてもすむCD-ROMの採用
ということで実は適性があるのはアドベンチャーゲームである。特にデータウエストの「サイキックディテクティブシリーズ」「第4のユニットシリーズ」はTOWNSらしいソフトの代表作といってよい。
また、2画面重ね合わせはPCやAMIGAのゲームの移植にも有用だった。富士通自身もこのことは把握していたようで、ログイン誌で駐米特派員を務めていたトム・ランドルフ氏をTOWNS発表以前から雇用して、サンフランシスコに窓口を作っていた。ルーカスアーツの一連のアドベンチャーゲームなど国内ではTOWNS版しかないようなゲームも多かった。
近い画面モードを持っていることからPC-9801からの移植も比較的行いやすかった。グラフィックは98そのままだったがスピーチなどサウンド面が強化されており出来がよかったというのはTOWNSユーザの自慢であった。
画面の横幅が256ピクセルに制限される、スプライト面と背景の2画面しか使えない[13]といった欠点もあったもののの、富士通からのサポートのあったビングを中心にアーケードゲームの移植も行われた[14]。
スプライトは当初つける予定がなかったが、アフターバーナーを移植させるために他の仕様が確定した88年になってから追加したものであったこと、および富士通の方針としてゲーム専用の回路はあまりつけたくない[15]という事情もありスプライト機能自体はやや残念な性能となった。
ビングはもともとタイトーとコネがあったため、タイトーや東亜プラン(タイトーに流通を委託していた)の移植が中心だった。
スプライト機能自身、時期的におそらくテキストVRAMエミュレーション回路[16]の応用と思われる。
TOWNSの場合、PC-98のようにキャラクタジェネレータの出力とグラフィックVRAMを合成するのではなく、2画面重ね合わせ機能を使ってテキストVRAM相当の機能を実現している。つまり、8kBのメモリ空間に保存したテキストデータをキャラクタジェネレータが読み取って、文字パターンを漢字ROMから2面ある画面の片方に転送する、という仕組みである。「キャラクタが単色である」「転送先の座標は水平8ピクセル、垂直16ピクセル毎である」「重ね合わせ処理は不要」という違いはあるが、「パターンメモリからVRAMへの転送を専用コントローラで行う」という点でスプライトと類似である。ちなみにこのメモリ空間はスプライトパターン保存メモリと共用である。