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ウルティマ7が国内PCに移植されなかった理由を考察してみる

はじめに

ウルティマシリーズのメインターゲットはApple][(Ultima Vまで)→PC(Ultima VI〜VIII、Underworldシリーズ)→Windows(Ultima IX)でしたが、これらの大半は日本語化されて国内PCに移植されています。移植されていないのはUltimaVII、Serpent Isle、Ultima VI外伝のMartian Dreamsです。1

このうち、Martian Dreamsについては国内PCへの移植を前提に翻訳作業が進んでいたのですが、諸事情によりキャンセルされました。2

残るUltima VII(及びUltima VII Part2の別名もあるSerpent Isle)はそのストーリー性から高い評価を受けていたものの翻訳及び国内PCへの移植は長らく実現されませんでした3。本ドキュメントはこの理由について自分なりに考察したものです。あくまでも考察なので事実と異なる可能性は充分にあることを理解下さい。

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それ以外ではゲーム機用に開発され国内版が先行していた「失われたルーン」シリーズと、コモドールVIC-20用に販売され海外でも幻の作品扱いされている「Escape From Mt. Drash」というゲームがあります。

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金井哲夫「ウルティマ公式ファンブック」14ページ(ローカス)より。金井さんはUltima VIの翻訳者で、園遊会4の折にご本人から伺った話しによればMartian Dreamsの翻訳もされており、キャンセルの理由はオリジンがオリジナル版の開発データを紛失した為とのことです。

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園遊会とはUltima IX及びUltima Collection日本版の発売にあたって、Ultimaシリーズ及びUltima Onlineのファンを招いて開催されたイベント。ロード・ブリティッシュを囲む会なので園遊会。幸運にもファンの一人として私も参加させていただくことができました。

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2021年になりようやくファンベースの翻訳をオープンソース実行環境のExultに実装した非公式日本語版が登場しました。

EAが移植を嫌っていた説

私も最近知ったのですが、Ultima VIIは「Electronic Arts(EA)のOrigin買収に対する反発」という裏テーマがあります。Ultima VIIが開発されていた1991年頃、オリジンは経営危機に陥っており、最終的(1992年秋)にEAに買収されるわけですが、リチャード・ギャリオット以下ウルティマの開発陣はこれに反発を覚えてたようで、敵役であるガーディアン及びその配下のフェローシップはEAの象徴と言われています。上記リンク先によればその根拠として以下の点を上げています。

  • フェローシップの中心人物であるElithebethとAbrahamの頭文字をつなげるとEAとなる

  • 敵側の重要アイテムであるCube(立方体)、Sphere(球)、Tetrahedron(正四面体)は当時のEAのロゴを意味する

そのように考えるとウルティマVIIのオープニング画面の「ブリタニアは新たな啓発の時代を迎えた。我が導きによりブリタニアは繁栄するであろう」というガーディアンのセリフも意味深に感じます。

Ultima VIIはEAによる買収が完了する前に発売されましたが、上記のようにEAを揶揄した内容であったためEAが移植を嫌がったという可能性は充分にあるかと思います。ただ、そうなるとなぜスーファミ版はでたのか、という話になるわけですが5

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Stephen Emond「Ultima: Collector's Guide 2012 Edition」Page N32によれば、Ultima VII(及びSavage EmpireとMartian Dreams)のポニーキャニオンによるスーパーファミコンへの移植交渉はEAによる買収前の1991年7月に一旦決裂しており、その後(おそらくEA時代になってから)改めてVIIとSavage Empireの移植契約が結ばれたようです。

ライセンス料が高すぎた説

上記のように、Ultima VII及びSavage Empireのスーパーファミコンへの移植契約は、EA買収前に一旦決裂しています。当時のOriginの資金難からライセンス料が高く設定されていた可能性はあり、それをポニーキャニオンや富士通が嫌がったのかもしれません。但し、Savage EmpireのPC-98/X68000版(ポニーキャニオン)や、FM TOWNS版のウィングコマンダー(富士通)はEAによる買収直後に発売されています。ライセンス料が問題だとすると、これらのタイトルはOriginが経営難になる前に移植契約がまとまったのかもしれません。

必要スペックが高すぎた説

オリジナルのUltima VIIはCPUが386SX6、VGA、メモリが2M以上、HDDと当時の国内PCのスペックに比べると高すぎたため、売れないと判断されたのかもしれません。PC-98シリーズ最後のV30マシンであるPC-9801URは1992年2月発売であり、まだまだ16色表示の16ビット機が主流でした。日本語やグラフィックのオーバーヘッドを考慮すると、Windows3.1が満足に走る程度のスペック(486&メモリ4M)くらいは必要だったかもしれません。386、メモリ2MのTOWNSでどうか、といったところでしょうか。

とはいえ、Ultima VIIIやUnderworldシリーズはEAビクターから販売されているわけですから、スペックが問題とならず、前述のライセンス料もクリアできる、EA買収後の1994年頃に改めて移植すればよかったのでは…とも思うのですが。Ultima VIIが出なかったせいでその後日談であるUnderworld IIのストーリーが日本のプレーヤーには分かりづらくなってしまいましたし。

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Ultima VII自体は16ビットコードで動作しているが、メモリマネージャであるVoodooが32ビットアーキテクチャに依存しているため

結論

EAの都合、ライセンス料、スペックどれもありうるとは思いつつ、それを否定する材料もあり「よくわからない」という結論になってしまいました。あとは、「Ultima VIIのゲームエンジンがPCのアーキテクチャに強く依存しており、前述のメモリマネージャなどトリッキーなテクニックも使っているため移植コストが高くなり、国内PCの市場規模では開発コストを回収できないと判断された」くらいでしょうか。実際にVIIはまだまだ市場としてはぎりぎり健在だったAmigaにも移植されていませんし。


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