Maniac Mansion
- 公開日: 2000/04/16
- 更新日: 2019/02/02
TM & (C) LucasArts Entertainmaent Company
概要
ルーカスアーツのスカムシステム採用グラフィックアドベンチャー第一弾。スカム・システムによる軽快な操作性と会話を軸としたコミカルなストーリーで、一躍「アドベンチャーのルーカス」を印象づけた傑作。 特に「複数のキャラを交代させながら操り共同作業を行う」ことで問題をクリアする、という独創的なアイデアが高く評価されている。 2019年時点ではGOG.com等からWindows、Mac、Linuxでプレイ可能なバージョン(英語版、IBM-PCベース)がダウンロード販売されている。 また、IBM-PC(英語)版は続編「Day of the Tentacle(LucasArts Archive Vol.Iに収録)」内でもプレイできる。日本語版はジャレコよりファミコン版が発売されている。
バックストーリー
それは20年前のある夜のことだった.... 隕石が、フレッド医師邸のそばに落下したのである。これがそもそもの始まりだった。
時は流れて現在。主人公デイブのガールフレンド、サンディがマッドサイエンティストと化したフレッドに誘拐された。おそらく人体実験でもするのだろう。 一刻の猶予もない。かくてデイブは友人たちとともにサンディー救出作戦を遂行するのである!
キャラクター紹介
- デイブ
一応主人公。しかしこれといってとりえのないボンクラである。ただし、慎重な性格なのでどじを踏むことは少ない。
- シド(仲間)
テクノ野郎。ニューウェーブバンドの結成を目指しているそうだ。当然ピアノはお手の物だ。また、過激な性格で、残酷なことも平気でやってのける。ゲーム中には出てこないがジェフと仲良しという設定がある。
- マイケル(仲間)
大学新聞の名カメラマン。こんなスクープだというのにカメラは持ってきていない(笑)。
- ウェンディ(仲間)
ノーベル文学賞を目指す小説家の卵。
- バーナード(仲間)
科学部部長。メカに詳しいので機械の修理など朝飯前。ただし臆病な性格である。
- ラザー(仲間)
パンクバンドのボーカリスト。ピアノも弾ける。性格は過激。つまりシドの女性版。「Dr.フレッドってきっとカワイイと思うわ」などと発言するところから、かなり変わった趣味の持ち主と思われる(笑)。
- ジェフ(仲間)
サーファー。デイブとほぼ同等の能力を有する。つまりこいつもボンクラだ…と思いきや実は電話修理ができるという特技を持っている。もっとも、電話修理自体はバーナードもできるのであえて選ぶ必要のあるメンバーではない。
- サンディ
デイブのGF。フレッドに誘拐され、得体の知れない実験の実験台に。ちなみに名字はパンツ(Pantz)。
- Dr.フレッド
サンディをさらった張本人。典型的なマッドサイエンティストで、ここ5年間地下室に潜りっぱなしで家族の前にも姿を見せていない。愛妻家であり、妻に対しては新婚当初のような口の聞き方をする。
- エドナ
フレッド夫人。看護婦。こちらもいい年して部屋をハートで飾りたてたりしている。ゲームには全く出てこないが実は人気の人生相談コラムニスト。
- ウィアード エド
フレッドとエドナの一人息子。典型的なギーク(オタク)。友達はハムスター。父親に劣らず変人であるが、意外に父親思いの一面も。老けて見えるが実は10代。
- グリーンテンタクル
フレッド邸に居候している謎の生命体。優しい性格であるが、同時に熱いロック魂の持ち主でもある。
- パープルテンタクル
グリーンと色違いの生命体。フレッドの忠実な部下である。
- 紫色のどろどろした隕石(または、メテオ)
20年前に落下した、謎の隕石。犯罪者であり、宇宙のお尋ね者である。
レビュー
あなたは「ルーカスアーツのゲーム」と聞いて何を思い出すだろうか。 えっ? 「ボールブレイザー[1]」? 何で知ってるんですか、そんな古いゲーム(^_^)。 冗談はさておき、ルーカスといえば大多数の人がまず「スターウォーズシリーズ」を頭に浮かべると思う。
しかし、アメリカでのルーカス評は日本のそれとは一線を画している。 すなわち、「良質のクラシックな(=非ミスト的な)アドベンチャーゲームを輩出する優秀メーカー」というものである。 切れのいい台詞回しと魅力的なキャラクター、そして安易なパズルに走らない、ストーリーに沿った謎解きは常に高い評価を得ている。 (一時期積極的にFM TOWNSに移植されたものの)これらの傑作の数々が日本ではほとんど無名のまま放置されていることが残念でならない。
この「Maniac Mansion」は1987年に発売された、ルーカスアーツ(当時はLucasfilm Games)としては2作目にあたる[2]アドベンチャーゲームである。 このゲーム以降ルーカスアドベンチャーの代名詞ともなる「スカム・システム[3]」を採用し、基本的な操作はマウスだけで行えるようになっている(ロード/セーブ/ゲーム終了はキーボード操作)。 たとえばあるアイテムを取る場合には「Pick Up」コマンドをクリックし、次いで画面上のアイテムをクリックすればよい。 それが取れるものならばあなたのものになるし、単なる背景だったら何も起きない。 また、ピアノのように巨大なものなら「取れないよ」という返事が帰ってくるし、敵キャラが取るのを邪魔してくる場合もある、といったあんばいだ。 コマンドにしたがって自キャラがちょこまかと動き回るのをみているのはなかなか楽しい。
また、このゲームのもう一つの特徴は協力プレイである。このゲームは主人公デイブの他に二人のキャラクターを操ることができる。そこで、例えば一人のキャラクターが囮となって敵を引きつけている間、別のキャラクターが重要アイテムを取りに行くといったことが必要となるのである。そして、彼らはそれぞれ特殊能力を持っており、この能力がゲームの鍵となるのである(仲間によって解き方が変わる)[4]。
さて、肝心のストーリーはというと、これがまた「B級映画のてんこ盛り」状態で、何とも形状し難いお笑いを提供してくれる。 そもそも舞台が「マッドサイエンティストの屋敷」である。 電気は当然自家発電の原子炉で炉心の冷却は庭のプールで行っており、もちろんプールは汚染されている。もちろんお約束の自爆ボタンもちゃんと付いている。 台所には当たり前のようにチェーンソーが[5]置いてあり、ある一室にはアメリカの通販番組で見かけるようなトレーニングマシンのとなりにホルマリン付けの目玉や脳が何げに配置されている。 もちろんお約束の宇宙人や怪生物も登場する。 見事なチープぶりと言わざるを得ない。
そして、何といってもすばらしいのが、個性的なキャラクターたちである。 フレッド博士はエドナに「おお僕のリトルビューティークイーンよ」などと歯の浮くようなセリフを吐くし、主人公たちは放射能で汚染されたベトベトを見て「ヤック。触りたくないね」だ(触らなくても被爆します)。ちなみに彼らはベトベトに触ることはしないが、平気な顔して踏みつけていく、サーファーのジェフなんて裸足ですぜ[6]。
まあ、1987年の発売ということでグラフィックは160x200の16色[7]だし音は内蔵ブザー[8]だから決して見栄えは良くない。だがゲームに流れる雰囲気やスクリプトの数々はB級好きには堪えられない。へんなゲームが好きな人、お一つどうですか?
ps 2019年1月時点でのダウンロード版はやや難あり。ゲーム中に何箇所か4桁の数字を入力する場面があり、この数字を探すのがゲームの重要なパズルとなっているのだが、ダウンロード版(Enhanced version)だとどんな数字を入力しても解決してしまう(つまり、数字を探す必要がない)。これは深刻なスポイラーであると言わざるを得ない。
なぜそうなっているかというと、どうやらマニュアルプロテクトのせいらしい。フロッピーでゲームが供給されていた当時は、コピー防止のためにプロテクトをかける必要があるのだが、IBM PC版のゲームについてはHDDへのインストールが前提となっている場合が多く、フロッピー自体に複製禁止のプロテクトをかけることができない。その代わりに、ゲーム開始時、あるいはゲームの序盤にマニュアルを読まないと進めないようなポイントを設けている。これがマニュアルプロテクトと呼ばれるものだ。マニアックマンションにおいては、マンションの二階にパスコードを入力しないと開けられないセキュリティドアが配置されており、パスコードはゲームのパッケージに添付の「Nuke 'M Alarms」という冊子に記載されている。ところが、ダウンロード版にはこの冊子は添付されていない。ちなみにセキュリティドアのパスコードを間違えるとメルトダウンが発生してゲームオーバーとなる。
それじゃゲームにならないのでは?と思われがちだが、ダウンロード版のマニアックマンションはSCUMMVM上で動作するようになっている。SCUMMVMではこの問題に対応しており(どうやら続編Day of the Tentacleの付録のマニアックマンションにも同様の問題があったようだ[9])、上記のセキュリティドアは最初から開いている。その副作用で、パスコードを入力する他の場面においてもパスコード機能自体が無効になってしまっているようだ。
従って、ダウンロード版のマニアックマンション(Enhanced version)を本当に楽しみたいのなら、Tandy設定にしたDOSBOX上で動作させるのがよさそうだ。「Nuke 'M Alarms」についてはここにはリンクは貼らないがGoogle等で「Maniac Mansion access code」といったキーワードで検索すれば見つかるだろう。なお、実行時はマウス操作が無効になっているが、シフト+Mで有効になる。なお、マウスカーソルの動きが粗くなり、セキュリティドアのボタンが押しにくくなっているので注意(ボタンのやや上あたりのところをさしてクリックするのがいいようだ)。また、ゲームの終了は実機ではCtrl+CなのだがDOSBOX上ではなぜか機能しないのでAlt+Tabでウインドウを切り替えてDOSBOXを終了させる必要がある。
なお、ダウンロード版の旧バージョンについては逆にTandy設定のDOSBOXでは動作しない(SVGA設定なら動作する)[10]のでこちらはSCUMMVMのほうがよい。なお、SCUMMVMだとF5を押すことで見れるセーブ/ロード画面がSCUMMVM共通のものに差し替えられてしまいオリジナルの画面が見られないので、一度はDOXBOXでやってみることを推奨する。(2019/1/27追記 SCUMMVMではAlt+F5でオリジナルのセーブ/ロード画面を表示させる)
ヒントポスター
日本ではその難易度、というかやや理不尽なきらいのある謎解きによってしばしばクソゲー扱いされがちな同作だが(ファミコン版がパスワード方式なせいもある)、ヒントポスターがファミコン版にはついてこないせいでは無いかと思っている。ヒントポスターというのは、オリジナル版とNES版に付属していた、アメリカの大学の学生寮のコルクボード状の掲示板を模したポスター[11]で、ちょい理不尽な謎についてのヒントが(掲示板に貼り付けられた新聞記事といった形で)婉曲に記載されている。ヒントになっている箇所もそうでない箇所[12]も割とブラックで、ヒントだけではなくゲームの雰囲気をより理解できるようになっている。
このヒントポスターも含めて本作の魅力だろうと思うので、雑に翻訳してみた(PNGフォーマット、約7MB)。なお、オリジナル版はMobyGamesで見ることができる。日本語訳を作成するにあたり、えり字、ダーツフォント、たぬき油性マジック、はなぞめフォントの4種類の手書き風フリーフォントを使用させて頂いた。(2019/1/21)
パソコン版は片面2色摺り。NES版は単色の表裏印刷のポスター。
掲示板風なので大学からのお知らせや、登場人物含む学生のメモ書きなども貼り付けられている。