サンフレッチェのスタジアム雑感
- 公開日: 2013/07/15(月) 10:35[JST]
2010~2011年の天気と動員
サンフレッチェによる「START for 夢スタジアム実行委員会」Facebookの投稿(リンク切れ URL: https://www.facebook.com/photo.php?fbid=543756985662070&set=a.529602097077559.1073741825.529580487079720&type=1)に晴天時と雨天時の観客数の比較記事が載ってるけどちと恣意的かな、とは思う。
雨天の試合数が記載されていない
雨天の試合数が少ないのであれば、雨天対策を行う意義は相対的に薄れる
(雨天時の観客動員数が増加していた)2012年のデータを抜いて、2011年と2013年の観客数を全加算している
「2012年は優勝効果がある」つってるけど、前年の優勝効果は今年も続いてると思うんだ
ちなみに、2012年のナビスコは全試合雨降ってなく、ナビスコの観客はいずれもリーグ戦の平均を大きく下回っているので、ナビスコを入れると雨天と晴天との差はもっと広がる
2013年と2011年で「雨天」の定義が違うのに両方一緒くたにして平均値を出すのは変じゃない?
震災で変則日程となった2011年はデータとして適切か?という問題もあるかと
恣意的なデータを持って何がしかの主張をすることは、道義的以前に下策ではないかと。短期的な扇動ができればいい状況なら別だけど、対立陣営がデータの矛盾点を突いてこないわけないし。裏を取ってこないほど行政はマヌケだと思っているのなら舐めすぎ。
私自身は道義的かどうかは興味が無い。公明正大なやり方でダメなものができる(って典型的な箱物パターンだよね)よか、卑怯なやり口でいいものが出来たほうがはるかにいい。大事なのはそれがどのような効果を生むか、その効果がイニシャル・ランニングコストに見合ったものかどうか、アンド、うまくいく見込みはどの程度なのか、ってことじゃないかと思うんだ。
で、効率・コスト・リスクを最優先にしてデザインしようとすれば、(ある意味無慈悲な)取捨選択を行う必要があるわけで、「まずいろいろな住民の望みを反映させましょう」というぱっと見公明正大なやり方でやると典型的な「誰にとっても公平に無価値な」ハコ物になりやすい。
なんで、特に広島市みたいに財政的に厳しくて、まちづくりでヘタを打つ余地があまり無い自治体の場合、まず行政主体で(住民の希望を無視して)、「住民に拒絶されない範囲内での最良のもの」を作るべく計画した方が結果としてうまくいくような気がするんだ。
てことで、2010年と2011年のビッグアーチ(エディオンスタジアム)の動員数も調べてみた。今回は天気だけじゃなく平日かどうかもチェックしてみた。
2010年
ビッグアーチでの開催は22試合。うち8試合が平日開催。雨天は3試合でうち2試合が平日。
晴天時: 平均14048人(標準偏差4782人)
雨天時: 平均7358人(標準偏差3267人)
晴天時(平日除く): 平均16280人(標準偏差3723人)
雨天時(平日除く): 平均11127人
土日祝日: 平均15912人(標準偏差3833人)
平日: 平均8276人(標準偏差2952人)
2011年
ビッグアーチでの開催は17試合(1試合広島スタジアムでやったのと、ナビスコが震災の影響でトーナメント方式になって1試合しか無かったため)。うち2試合が平日。雨天は3試合ですべて土日祝日。
晴天時: 平均13932人(標準偏差3327人)
雨天時: 平均11598人(標準偏差3017人)
晴天時(平日除く): 平均14479人(標準偏差3012人)
土日祝日: 平均13903人(標準偏差3199人)
平日: 平均10650人(標準偏差4323人)
どちらかといえば平日開催の影響の方が大きいようにも思える(とはいえ、平日と土日祝日とでは客層が変わるのでアクセスのいいところに作れば平日でも土日祝日並に集客できる、というわけでもないだろう。
ただの専スタではいずれ限界を迎えるのでは?、という話
ブログ「アメリカスポーツ三昧」さんの記事「マイナーリーグベースボールを侮るなかれ」を見て思ったこと。MLSは創立当初からある古参チームが動員に苦労する傾向があり、その理由の一つが、(Columbus Crew Stadiumのように)高級感の無いスタジアムであるが故に企業顧客の獲得に苦労している、ということらしい。
そういえば、先月見に行ったJ2千葉vs山形の試合では、チケット単価の安いゴール裏やバックスタンドの入りは上々だったものの、比較的高額なメインスタンドは空席が目立つ状況だった。裏を返せば「高額なチケットを買って観よう」と思えるだけの差別化ができていないということでもある。
てことで、いずれ(それも近いうちに)「専用スタジアムであればよい」という時代はJ1でも通用しなくなるだろう、と思うんだ。
考察
またまた持論に回帰してしまうが、やはり妥協できるところはある程度妥協して、また10数年での宇品移転を前提として、行政にとってAcceptableな規模(と資金負担)のスタジアムを跡地につくる、という方向に持っていくのが妥当なんじゃないだろうか。
全面屋根掛けや企業顧客向けの高級設備は売上増をもたらすが、その分クラブが払う運用コストも増大する。クラブライセンス上赤字は避けるべきであり、今のクラブには時期尚早であるように思える。また、旧市民球場とマツダスタジアムを比べるとわかるように、(客単価の高い)いい球場は建築面積がより大きくなる傾向にある。旧市民球場跡地は地下構造物の配置や他に作るべき設備との兼ね合いから、スタジアム用の土地をあまり大きくとることができない(旧市民球場より一回り小さい程度、と思っておいた方がよい)。それに高さ規制も「いいスタジアム」には障害だ。
あれこれ無理をして(当然イニシャル・ランニングコストは上がる)も中途半端なスタジアムにしかならないのなら、短期利用と割り切って簡素・小規模なスタジアムにするというのも一つの手ではないだろうか。