正直、市民球場跡地に専スタは難しいような気がしてきた。

サーバのリプレース(遅々として進まない)が終わるまでこのブログを更新するつもりは無かったんだけど、なんか色々と盛り上がっているっぽいんで。ちなみにこの件に関しては、私は行政よりかつ「身も蓋もない」つースタンスで書いてます(私は単なるサラリーマンで行政の人間ってわけじゃないよ、念のため)。

1. そもそもあの土地にスタジアムを建てることが可能なのか、という問題

「J且つA代表仕様の」サッカースタジアムって非常に制約の多い施設だ。詳しくはJFAのスタジアム標準に書いてあるのだが、要するに

  • A代表の試合をやるならキャパ4万人オーバーで

  • 敷地は、お客さんが余裕を持って退場できるよう十分なスペースを確保しましょう。特に、ホーム側のゴール裏入場口付近は会場前からサポーターが待機しているのでここに十分なスペースを確保することが必要です。具体的には、収容人員の2~3割の観客が待機列を組めるスペースが必要です。

  • 待機スペースにトイレを配置しましょう。

  • 南側の空が見渡せる場所に放送車を停めるスペースが必要です。

  • メインスタンドが西側に配置されることが望まれます。

  • ピッチは天然芝である必要があります。

  • VIP用の動線を一般観客用とは別に確保しましょう。

  • ゴールラインから10m、タッチラインから8.5mのスペースを用意することが望ましいです。つまり推奨されるピッチの大きさは125mx85mとなります。さらに、ラグビーでも使うつもりならばもう5m縦に広げて、130mx85mとすることが望ましいです(参考: ラグビー競技規則[archive])

  • 更衣室等、チームが使用する部屋はホームとアウェイとで差別することなく同等のものでなければいけません。また、メインスタンド側に設ける必要があります

  • 更衣室は、一日に複数試合を行うことを考慮して4チーム分確保することが望まれます。

  • コンコースは、ハーフタイム時の人の往来を考慮して幅員を確保しましょう。

  • 観客席は独立した椅子で、30センチ以上の背もたれがあることが望まれます。

  • すべての観客席が屋根で被われていることが望まれます。

  • 座席の横幅は最低45cm、できれば47cmを確保することが望まれます。

  • スタンドは、メイン・バック・両ゴール裏の独立したセクションにより構成されるべきです。

  • 女性1000人につき20室、男性1000人につき5室+小便器10、洗面台5器を少なくとも設置することが推奨されます。

ということのようだ。でもって、市民球場跡地も制約が多い。

  • あまり広くない。専スタを建てるんなら最終的には40000人級に拡張することを前提とすべきだが、40000人級スタジアム「のみ」に必要なスペースは200x200m程度。隣接する商工会議所とPL協会、青少年センターをつぶしてなんとか確保できるか、ってところ(地下がポンプ室となっている球場南の「勝鯉の森」や球場北の武道場はつぶせないので)。待機ゾーンを確保するにはもう少し広いスペースがあった方が良い。

  • 都市公園法上の制約。市民球場跡地は都市公園である「中央公園」の一部だ。で、都市公園法では、この中の建物の建築面積の合計が全体の面積(確か44ha)の12%以内、ていう制約がある。スタジアムを建てるなら、県立体育館、青少年センター、中央図書館、広島城等と合わせて52800平方メートル以内に抑える必要がある。はっきりと調べた訳じゃないが、今の中央公園で建物を建てる余地は30000平方メートルちょっと(8/22追記。ここは間違い。資料が見つかったので新しい記事で説明)。40000人級スタジアムを建てたら多分他に何も作れない。まあ建築面積はやりようによっては何とかなるけど。例えば、いずれ解体される基町アパート(ここも国有地)はいずれ解体されるけど、その時にここと市民球場跡地を交換して跡地を中央公園から外してしまう、とか。

  • 跡地(を含む中央公園全体)は国有地。なんで、法規ギリギリのラインをついていこうとすると国から横槍が入る可能性大。てか旧市民球場のときも国と散々やってるし、ここに「プロサッカー仕様の」スタジアムを建てると国と揉める可能性大。

  • 高さ制限。跡地は平和公園と原爆ドームをつなぐ線の延長上に位置しており、ここは景観維持のために25mの高さ規制がある(市民球場の三塁側スタンドの所はさらに厳しい20m)。鹿島サッカースタジアムの高さが50m近い[archive]ことを考慮すると、ここに40000人級スタは厳しい。グラウンドを掘り下げるという手もあるが、芝の育成上好ましいとはいえないだろう。あるいは、うまくスタンドを配置して40m超のスタンドでも景観上問題ない、とうデザインにすることも考えられる。ただし、その場合は平和公園のアーチ→原爆ドームをつなぐ線の延長上(だいたい旧市民球場のレフトスタンド外周をかすめるくらいの位置)にぴったりフィールド中央が位置する、というデザインになると思われ、今度はメインスタンドを建てる土地が無い。

  • あと、都市計画法上の制約で、建ぺい率60%、容積率200%っていう制約もある(詳しく広島市地図情報提供システム を参照のこと)。

てことで、跡地にスタジアムを建てること自体が難易度大。

2. 跡地が一等地すぎるという問題

跡地周辺の紙屋町エリアの課題は土日祝日の集客だと思うんだ(バスセンターがあるんで平日の集客はそこそこあると予想。たしか一日17万人の人通りとか)。で、跡地をJ&代表仕様のスタジアムにした場合、跡地をほぼ完全にスタジアムが占有してしまうことになる。スタジアムでの集客はサンフレッチェと代表戦だが、ACLやナビスコは基本平日。天皇杯も週末開催は1~2試合。代表戦は年1~2回がいいとこかと。年20日ちょっとの稼働って周辺の商店にとって満足がいくレベルじゃ無いような気がする。

アマ球技やなでしこで稼働率を確保、っていう考え方もあるけど、天然芝の養生を考えると厳しい。アマ球技は原則秋に集中して試合が行われる上、秋はオーバーシーディングで2週間ほど利用を止めなきゃなら無い。加えて、アマやなでしこ用としては大きすぎる専スタは果たしてアマ側にとって魅力的なのか?、ていう問題もある。大きすぎるスタジアムは小規模のリーグやトーナメントでは却って使い勝手が悪いのではないだろうか。陸上関係者がビッグアーチを持て余しているように。(大きなスタジアムを使うと、警備やらで出費も跳ね上がりそうだし)

3. じゃあどこに建てる?

スタジアムを建てるなら交通の便のいい所、具体的にはJRの主要駅から歩いていける所、あるいは、道路事情が良くて駐車場を十分に確保できる所。もちろん200x200mのスタジアムを建ててもまだ待機スペース等を確保できるだけの広さがあるというのが大前提。どちらのパターンでも、日常的に集客できる施設、例えば総合スーパーなんかと組み合わせるとまちづくり的にモアベター。

そんな場所があるの?と思って調べてみた。

  • 二葉の里。広島駅から北に数100メートルという好立地。すぐそばが病院なのがネック。まあ日産スタジアムも隣が病院だしなんとかなるか。あと、用地の真ん中を道路が横断する予定(リンク切れ URL: http://area-m-hiroshima.org/wp-content/uploads/shinkansenguchi1108.pdf)だが、まだできてないので何とか計画変更を。或いはアムステルダム見たいにピッチの下に道路を通すとか。

  • 中央公園(運動広場・芝生広場)。市民球場跡地の北の体育館のさらに北。広さ的には十分で高さ規制も無い。だが基町アパートと隣接しているので騒音対策が必要。跡地と同様国有地なので国を説得する必要あり。

  • 安佐南区川内。土地を買収しないといけないけど郊外ならここか。山陽道、可部街道、祇園新道を擁する、(ぱっと見た限りでは)道路事情が良さそうなのがメリット。近隣に商業施設(緑井)があり、鉄道も緑井(可部線)、大町(アストラム)が使える。東に2キロちょっと行くと安芸矢口(芸備線)があるのでバスを併用すればこっちも使える。

どれも一長一短、ではあるが、跡地以外に手は無い、っていう状態でも無いと思う。

4. で、跡地はどうするの?

上でも書いたけど、この立地に求められているのは「土日祭日にイベントをこまめに開くこと」だと思うんだ。一回あたりの動員が少ない分回数でカバー、ていう感じで。なんで「イベント広場」ってのはそれなりにありだと思うんだ。前にも書いたけどイベント広場の役割ってでかいイベント誘致じゃない(つーかでかいイベントならどこでやっても成功する)。むしろフリマレベルの小規模イベント誘致が鍵。もちろんそのためには利用料を安く(代々木公園と同様の、1日あたり50円/平方メートルが理想。いや国有地地代があるのはわかっているんだけど)することが重要。年数千万の出費で週一以上のペースでイベントができたら成功の部類かと。

でも、イベント広場だけでも弱い。それに、イベント広場は10000平方メートルもあれば十分。他にも何かを入れる余地は十分にある。

イベント広場と用途が重ならず、且つ広場と同様細めにイベントを開催できて、なおかつイベント広場で有用な諸室(更衣室とかトイレとか)を提供できる設備。

球技場はどうだろう。プロ/代表仕様のスタジアムはやたらと制約が多いが、それを外してしまえば? つまり、スタジアム標準で言うところのクラス4スタジアム。収容人員は5000人(言っちゃ悪いがJと代表を除く大抵の競技はこのクラスのスタジアムで十分まかなえる。なでしこもスター選手を集めたINAC神戸戦だけが集客できているという状態)でピッチはロングパイル人工芝。で、なでしこや各種アマチュア球技(サッカー、ラグビー、アメリカンフットボール、ラクロス)をガンガン開催する。

前市長じゃないが、都心エリアのスタジアムが「コンクリートウォール」という側面を持っているのは否定できない。大きな(しかも入場料を取る)建造物は、人の流れを遮断してしまいがちになる。アマチュア競技などの小規模イベントで集客するには、「何をやっているのかが外から見えて、気軽に立ち寄れる」ということが重要だと思うんだ。だから、相生通りを歩いていたり、バスセンターに向かうバスの中から何をやっているのかが見える、スタンドの低いスタジアム&イベント広場ってのは結構いけるんじゃないかと。

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Note

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