DAZNは何をもたらすのか
- 公開日: 2016/08/06(土) 06:38[JST]
先日、Jリーグと10年2100億の契約を結んだことでニュースになったDAZN(こっちのリンクとどっちが正しいのかな)。これが日本のスポーツ環境及びスポーツ界にどんな影響を与えうるのかを自分なりに調べてみた。
DAZNとは
英パフォーム社によるインターネットを利用したスポーツ中継
2016夏より日本、ドイツ、オーストリア、スイスで開始予定(ブラウザの言語設定を変えてアクセスしてみると、少なくとも日本語、英語、ドイツ語でサイトが準備されていた。フランス語は無し。ちなみに英語だと上記4ヶ国で放送予定であると表示されるが日本語だと日本一国、ドイツ語だと日本語以外の3ヶ国のみ)
視聴環境は以下の通り(ただしヘルプページによると現時点での無料ベータ放送はAndroidは不可。PC、iPad系を除くiOS、AmazonFireTVでの視聴となる)
PCブラウザ[Windows(8.1以降)/MacOS X] (Linuxとかも大丈夫っぽい)
Android(5.0以降)
iOS(8.0以降、準備中)
AmazonFireTV
PlayStation3・4(準備中)
各社スマートテレビ(対応準備中)
料金は月額1500円との噂があるが公式には発表されていない
広告ではなく視聴料のみで収益を確保するビジネスモデル
ラインナップ
現在発表されているのは以下の通り
Jリーグ J1/J2/J3リーグ戦全試合、チャンピオンシップ、J1昇格プレーオフ、J2/J3入替戦(国内のみ): 2017から10シーズン
サッカーブンデスリーガ(GOAL.comより) 1部全試合及び2部の一部: 2016/2017シーズンから2シーズン
サッカー セリエA 詳細不明
総合格闘技UFC(AC Watchより) 年間40試合程度: 2年
バレーボールVリーグ プレミア男女全試合及びチャレンジI(2部)男女主要試合: 2016/17シーズンから5シーズン
男子テニスATP 詳細不明
女子テニスWTA 詳細不明(WTAの試合中継はパフォーム社が制作)
アメスポ NFL・NBA・MLB 詳細不明(今のところ、NFL、NBAの国内サイトには言及なし)
プロ野球 横浜ベイスターズ 詳細不明
ダーツ PDC 詳細不明
DAZNのビジネスはうまくいくか
Jリーグへの放映権料が年間210億以上とのことだが、NTT負担分が相応にある(少なくともソフトバンクとの競争で釣り上がった分はNTT負担じゃないかなーと予想)ので、DAZNの採算ラインは210億/年額料金よりも下にくるはず。ブンデスはたぶんドイツ語圏とセットでの契約になってるような気もするし…70万人契約=126億くらいでも採算とれるんじゃないかなー、と。ちなみにJリーグの海外放映権は2019年シーズンまでスカパーなんで、スカパーからライセンスを買わない限り国内のみで基本的に稼がなきゃならない。
で、それだけの契約が見込めるか、というとどうなんだろう。今のところ計算できるのはJリーグとブンデスを観戦してた層、総合格闘技ファン、バレーボールファン。アメスポ系は全試合じゃないだろうし(リーグ自体が有料ネット中継やってるのでひいきチームがあるようなコアなファンはそっちに流れるし、時々見るくらいの人はNHKとかで充分じゃないかと。MLBの日本人出場試合はNHKが大抵やってるし)。テニスも錦織出場試合等有力カードは別のメディアが押えていると思う。
また、ライバルとなるソフトバンクのスポナビライブはnpb(巨人・広島戦以外)、MLB、大相撲、バスケBリーグ、プレミア、リーガと固定ファンがそれなりにいるコンテンツを押えているのは大きい。価格もDAZNの状況次第で値下げしてくるだろうし(ただしスポナビライブは原則スマホやタブレット向けサービス)。
人気を考えるとJリーグサポと日本人の多いブンデスの視聴者でどれだけいけるかというのがポイントになりそう。というか、Jリーグの権利取れなかったら(日本では)詰んでたよねDAZN。あとはJ以外のメジャーコンテンツをどれだけ引っ張ってこれるかかな。
(実家暮らしなので簡単にはでアンテナを引けない)中高生くらいのユーザの加入は期待できるかな?と思ったけどクレジットカード決済のみっぽいので厳しそう。
個人的には内外のマイナーなスポーツを積極的に取り上げてほしい。リトルリーグワールドシリーズを放映してくれるなら契約するぞ。
他のメディアに与える影響
とりあえずスカパーにダメージ。スカパーがパフォームからサブライセンスを取れなかったらJリーグセットの視聴者はDAZNに行くんじゃないかな。ソフトバンク(スポナビライブ)については当面は影響は小さいと思う(NTT、KDDIとの通信インフラ競争の駒という一面もあるのでパフォームほど利益を重視しなくても良さそうなので)。
Jリーグや他のスポーツに与える影響
まずJリーグに年210億の収入(+地上波・無料BS分)。ただし制作はJリーグが行うので(実際は地方局なんかがやるんだろうけど)その分のコスト(Jリーグによれば50~100億とか。年1000試合以上あるしね)を引くと110~160億くらいか。
あとはDAZNでJリーグの視聴者が増えればJオフィシャルスポンサー収入(や各Jクラブのスポンサー収入)の増額も期待できる。ただ、視聴者数の増加の為にはDAZNに契約した他スポーツファンが「ついで」に見てくれてそれをきっかけにJも見てくれる、というプロセスが必要になるだろうけど現時点ではDAZNのコンテンツはちと弱いので多くは期待できないようにも思える。上でも書いたけど、どれだけ日本人受けするメジャーコンテンツを引っ張ってこれるかが鍵。
(ファン層の規模からいって)DAZNの恩恵を最も受けるのはJよりもマイナーなスポーツ群(よりメジャーなJリーグから視聴者が流れてくることが期待できる)。Vリーグとか結構な追い風になるんじゃないかな。