野球で米大学に留学するということ

花巻東高校・佐々木麟太郎が米Stanford大への留学を決めたことでNCAA留学に関する解説記事がいくつか出ている。米大学への留学はバスケでは田臥勇太(Brigham Young)、渡邊雄太(Florida)、八村塁(Gonzaga)といるし、陸上でもサニブラウン・アブデルハキーム(George Washington)とトップアスリートの米大学進学の例はあるが、佐々木の場合は野球という日本で人気のあるスポーツで、且つStanfordという学業面でも超一流校として抜群の知名度を誇る大学[1]への進学となるので話題になっているのだろう。

これらの記事では日米の大学の役割の違いやスポーツ推薦特有の事情などがあまり考慮されていないように見え、違和感を感じた。ということで自分が調べたことをまとめてみようと思った次第。

難関校Stanfordに進学できるということは学業成績も良かったの?

NCAAのルールでディビジョンごとに進学できる最低成績が規定されており、大学の授業についてゆけるだけの学力が要求されている。ただし一般入学に比べると、(奨学金をもらえるレベルの)スポーツ推薦は必要とされる学業成績は低めに設定される。

Stanfordに進学すると卒業までに5000万円かかるっていうけど払えるの?

Stanfordはフルスカラシップ(学費・食費・寮費全額支給)の奨学金を提供することを表明している。ただし、卒業まで奨学金を提供するかどうかは大学の考え次第だろう。と、いうのも奨学金枠は競技&ディビジョンごとに規定されており、2024年のDivI野球の場合は最大32人の選手に最大で計11.7人分の奨学金を提供可能というもの。そんな中でフルスカラシップというのは一年目から主力として活躍することを期待されているということである。そんな選手は最短でMLBドラフトにかかることが予測される。MLBのドラフトのルールでは3年目のシーズンを終えるか、21歳になった選手が指名対象となる。佐々木は2005年4月生まれということなので2年目の2026シーズン終了時点で21歳となりその年のドラフト対象となる。

NCAAではプロ契約した選手はその競技の選手資格を失う(他の競技についてはOK)。そのため期待通り2年でMLB入りすれば奨学金も打ち切りとなる。ドラフト上位であれば十分な契約金が支払われるはずなので、本人の意欲があれば自費で学費を支払い、通信教育やオフシーズン、あるいは引退後に通学して卒業ということになるだろう。

一方で2年次までに十分な実績を積めず、プロ入りに至らなかった場合、奨学金を減額、あるいは打ち切る可能性はある。その場合、奨学金を払ってもよいという大学に転校するか、学費を別途確保してStanfordでの選手を継続するか、あるいは退学ということになる。ただ、佐々木の場合は父親が菊池雄星、大谷翔平を生んだ高校の監督であるという事情もあり、その配慮から選手資格のある間(原則として入学から5年以内の計4シーズン)は奨学金を出し続ける可能性はある。

アメリカの大学は卒業が大変だというけれど大丈夫?

まず、上で述べたように選手として順調に実績を積んでいけば2年でプロ入りするため、4年で卒業する可能性は低いし、卒業しないまま退学ということになる可能性もある。また、そうでなかったとしても一般入学の学生よりも卒業のハードルは多少は低くなる。

アメリカの総合大学は日本とは違い、原則として入試は学部ごとではなくキャンパスごとで、専攻は入学後に決める[2]。そして、アメリカは学歴社会であり就ける職業は大学の専攻に左右される[3]。特に日本から留学するような人は高収入の職業につける学部、あるいは大学教員を目指す専攻を選択することが多いかと思うので「卒業が難しい」という印象になるのだろう。一方であまり良い進路が期待できない代わりに単位は取りやすい、という専攻もありこれが結果としてスポーツ選手ご用達になっていたりする[4]

また、特に野球のような登録選手数に対して奨学金枠が少ない競技では、少なからぬ奨学金を払ったうえ学業成績不良で試合出場不可、という状態になることは大学も望んではいない[5]。そのため学業サポートの為のスタッフ(主に同じ大学の学生バイト)を雇用している。Stanfordなら日本人の学生も多いので人材には事欠かないだろう。

Stanford卒なら各界から引く手あまただよね

前述の通り、アメリカでは就ける職業は専攻や副専攻[6]で決まるし、アスリートは学業面で優遇される部分もあるため一般入学の学生よりも評価は低めになる。もちろん文武両道のモンスターもいるけど。佐々木が興味があるというBusinessやEcomonicsを修了できれば間違いなく引く手あまただろうが。

アメリカの大学が優れている点は、全米・全世界から奨学金で集めた天才と、天才の能力を理解しかつビジネスとコミュニケーションの教育を受けた秀才、そして多額の寄付金を積んで入学した富豪が揃い(富豪が秀才を兼任していることも多い)、起業のチャンスが多いことだろう。上記のようにアメリカの大学は入学後一定期間の教養課程を経た後に専攻を決めるので、Stanfordほどの一流校であれば後に様々な分野で成功者となる人物と教養課程でクラスメイトとなることだろう[7]。彼らとの交流は、セカンドキャリアにとって非常に有用なものとなることは間違いない。

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