広島市広域公園の収入とランニングコスト

サッカー場を市民球場跡地なり宇品なりに作ろうとした場合「ビッグアーチはどうするの?」というツッコミが入ると思う。で気になったのは「現状はどうなの?」ということ。ということで市が公開している資料を中心に調べてみた。

まずランニングコスト。これは「広島広域公園 管理運営経費・使用料収入実績額[archive]」という資料に記載されている。だいたい4億円±2000万円の範囲で推移しているようだ。ただし、「広島広域公園管理業務仕様書」(リンク切れ URL: http://www.city.hiroshima.lg.jp/www/contents/0000000000000/1311763160330/files/shiyousyo.pdf, 平成28年度版は https://www.city.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/26997.pdf)によれば、一件あたり100万円以上の修繕については市の負担とのこと(7(2)ア(エ)a(b))。

次に収入。これも「広島広域公園 管理運営経費・使用料収入実績額」に記載されている。コンサートの無い年で一億、これにコンサート使用料が加わる形。月別、施設別の内訳が「広島広域公園指定管理者募集に係る質問に対する回答の別紙」(リンク切れ URL: http://www.city.hiroshima.lg.jp/www/contents/0000000000000/1311763160330/files/kaitoubessi1.pdf)に記載されている。なお、使用料収入とは、純粋な使用料であり、広告料や出店の収入は含まれないようだ。

これらの資料と、Jリーグの「2010年度Jクラブ個別情報開示資料[archive]」を付き合わせればいろいろなデータが得られそうだ。とりあえず2010年度(Jリーグに合わせたので2010年2月から翌1月まで)のビッグアーチの収入をまとめてみた。タイプミスがあるかもしれないがそこはご容赦。データを加工したいという奇特な人はCSV版をどうぞ(UTF-8なのでWindowsのExcelで編集する場合は拡張子をtxtに変更しないと文字化けするかも)。なお、2010年は天皇杯のビッグアーチ開催はなかったようだ。

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この表の「入場料加算」というのが、広島市公園条例にある「利用者が入場者から入場料、観覧料その他これらに類する金銭(以下「入場料等」という。)を徴収する場合の金額は、この表に定める額(備考の1に規定する場合においては、当該額)に入場料等の総収入額から5万970円(広島広域公園陸上競技場を利用する場合にあつては、10万1,940円)を控除した額の100分の10を超えない範囲内において市長が定める割合に相当する額に100分の105を乗じて得た額(その額に10円未満の端数があるときは、その端数金額を切り捨てた額)を加算した額とする」に相当するのだろうか。だとすると、「市長が定める割合」を3パーセントくらいにしないとつじつまが合わない。中国新聞によれば、2001年頃のスタジアム使用料(広告料込み)は一試合300万とのこと(広島サッカー専用スタジアム構想委員会より)[archive]。入場料収入の3%+広告・売店収入+固定使用料(込み込みで一日30万程?)で6167万。こんなもんか。

どうでもいいが、広島広域公園管理業務仕様書によれば、入場料収入は全額指定管理者の収入になるとのこと(5(1)ウ(ア))。んでもって、「広島広域公園指定管理者の業務実施状況(平成21年度)の概要・評価[archive]」によれば、市から管理者に支払われている指定管理料の額は約3億8000万円で管理運営経費とピッタリ同じ。つまり、指定管理者にとってみれば、支出は全部市が持ってくれて、入場料収入はそのまま利益になるということ? だとしたらイージービジネスにも程がある。

(2014/10/20追記)

広島広域公園指定管理者応募要領[archive]によれば、現在の指定管理契約(2012~2016年度)では指定管理料は約1億円減額され5年で最大13億強=一年あたり2.6億となっている。これまでの利用実績から指定管理者の収支がトントンとなるように指定管理料の調整が行われたようだ。なんで、上の「イージービジネス」というのはこれを書いた時点での認識としては不適当だった。

(追記おわり)

まとめるとこんな感じかな。

  • 現状では、市にとっての支出は平均すると年4億。

  • サンフレッチェからのスタジアム使用料やイベント収入は市には入らない。ただし、「広島広域公園指定管理者募集に係る質問に対する回答」(リンク切れ URL: http://www.city.hiroshima.lg.jp/www/contents/0000000000000/1311763160330/files/situmonkaitou.pdf, 平成28年度版はhttps://www.city.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/27020.pdf)によれば、契約期間中にイベント収入が計画時の額を上回った場合、上回った分については市と折半とのこと。

  • 市に入る金額は広告費と売店収入で4000万円弱。これに、イベント収入の一部が加わる(現状水準なら均して年数百万程度)。

  • 市にとっての広域公園の実質的な収支は平均して3.6億円弱/年の赤字っていう感じ。あと、これに大規模改修のコストとかが加わるか。

さて、サッカー場ができてサンフレッチェの試合がなくなるとどうなるかというと、広告・売店収入がなくなる(もっとも、サッカー場の広告・売店収入が加わるので市としてはプラスにはなるが)。これに対して、支出は…というとあまり減らないような気もする。というのも、「広島広域公園指定管理者募集に係る質問に対する回答の別紙」に記載の電気代に月ごとの変動が少なく、ランニングコストにかかるプロサッカーの影響があまり大きくないように思えるからだ。1000万円/年いかないんじゃないだろうか。

でもって、イベントがどれくらい増えるかというと… 正直大きくは期待できないと思う。というのは、地方のスタジアムでのコンサートって大抵ツアーの一環で行われるわけで、これまで、スタジアムツアーのスケジュールには大体ビッグアーチが含まれている。また、ドームツアーやアリーナツアーは屋外とはステージ・音響設備が違うので、例えばドームツアーにビッグアーチを含めるのも難しいだろう。なんで単発イベントで…ってことになるけど、ざっくり宮城スタジアムの実績をWeb Archiveでさらって見た限りでは期待できない(併設されている体育館では結構コンサートが開催されているので交通の便が悪いからというわけでもなさそう)。年一で定例会的なコンサートを開催できれば上出来、というところではないだろうか。これで+2000万/年ってところか。

つまり、サンフレッチェがビッグアーチを出ていくと、広域公園に関する市の収支はちょっと悪化する(年1000万するかしないかくらい)。ただ、今の指定管理契約は(指定管理者にとって)ヌルすぎるところもあるように思われるので、そこらへんを改善できれば現状よりよくなるかも。それ込みでも年2億以上の赤になるとは思うが。

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