広島市長は松井一實氏に
- 公開日: 2011/04/12(火) 07:40[JST]
広島市長選挙の結果、厚生省出身の松井一實氏が旧郵政省出身で副市長の豊田麻子氏を退けて市長となることが決まった。
今回の市長選、有力とされた候補4人のそれぞれが懸念事項を有しており、市長を任せるに足る、と自信を持っていえる候補はいなかった。あえて一人選ぶのであるが、条件付きではあるが松井氏、というのが選挙前の私の感想だった
前も書いたが、私は秋葉市政の都市計画については「方向性は間違ってなかったがスピードが遅すぎた」という感想を抱いている。スピードが遅い原因は保守系が主体の議会と揉めまくっていたからだ。議会と行政とはその性格上、対立するのが当然、ではあるのだが、広島の場合はそれが極端であり、単なる足の引っ張り合いに終始していた。
それ故に、次の市長には、議会との関係改善つまり、建設的な対立関係を築くことができるという能力が求められる。
その一方で、市長は市という組織のトップであり、感情に惑わされることなく冷静に「市という組織にとって最良の」選択をとることができるという能力も求められる。そのため、実の所、地方政令都市の市長にはヨソ者の方が向いていたりする。(出向で地方とベッタリの関係になりやすい)旧自治省出身者以外の中央官僚、というのは結構あり。
ということで、前者、後者の能力を兼ね備えている可能性が一番高いのは松井氏、ということになる。ただし、上でも書いたように条件付きである。
秋葉氏は極めて高い謀略能力の持ち主であり、議会(あるいは市民)や財界の、行政から見たら過大且つ不要な要望をうまく抑え込んでいた。秋葉氏が引退することで、それらの要望が再燃することが予想される。彼らとの過剰な敵対を避けつつ、これらの要望をうまく捌くことができるか、というのが今後の松井氏に課せられた課題、ということになるだろう。議会や財界に飲まれてしまえば旧荒木市政時代のように「間違った方向に全速で進む」ことになりかねないし、要望を強硬に突っぱねれば秋葉市政時代のように足の引っ張り合いで何一つ進まない、ということになるだろう。
残りの3候補、大原邦男、桑田恭子、豊田麻子の三氏についてもコメントしておこう。
大原氏については、前回の選挙の時からヲチしていた。ブログの内容からの感想だが、彼は市民目線過ぎる。うん、市民目線、というのは(有権者の代表である)市議としてはいいことなんだ。でも、トップの資質としては欠点だ。
私も含め市民てのは持っている情報も限られているし、問題をダイレクトに(そして自分の行動様式をできる限り変えることなく)解決するものを望みがちだ。例えば新球場。当時の一般的な地元カープファンの望む新球場は、「カープ戦は外野席から埋まって、内野二階席はガラガラなんだから、甲子園のように巨大な外野席をもつ一層式球場がベスト」というものだった。だが、こんな球場が観戦のしやすさという点からは×であることは、マツダスタジアムを見た後なら直ぐに理解できると思う。そして、人間という物は、自身の生活と関連が低いものについては無関心となりがちである。
それ故に、市民からの要望というものは、利害関係のある特定の層のみに大きなメリットがあるが、市全体にとっては効果が低いものとなりやすい。市民目線で市民の要望をダイレクトにかなえようとすれば、非効率極まりないハコが乱立する可能性が高い。
こういっちゃなんだが、大原氏は市議が適職だったと思う。
桑田氏についても、市議出身という点については同じ。また、議員削減を掲げているため、議会と対立する可能性も高い(もちろん、議員削減自体は重要なことである。広島市の議員は半減してもたぶん問題ない)。議会からのプレッシャーをうまく躱すのはかなり難しい。それができた秋葉氏が異能なのだ。
個人的には、直接批判の矢面に立たないで済むポジション、具体的には副市長が適職なんだろうな、と思う。
豊田氏は、副市長で秋葉市長派とのカラーが強い。豊田氏が市長になることのリスクは、安易に秋葉市政を、それも表面的に継承してしまう可能性。秋葉市政は良くも悪くも秋葉氏の異能によってなんとかバランスをとっていた。他者が安易に秋葉氏のやり方を真似ると一気に崩壊してしまう可能性が高い(小泉政権の後を継いだ安倍政権のように)。それに、秋葉氏は本音は隠し、むしろ撹乱の為に本音とは真逆のことを公言するタイプだ。秋葉氏の政策を表面的に真似てしまうと、むしろ悪い方向に進んでしまう。
仮に豊田氏が秋葉市政を根幹から理解し、且つそれを遂行できる能力があるという最良の条件があったとしても、その場合は秋葉市政と同じ、つまり、「方向は間違ってないが遅々として進まない」状態がさらに続くだけだ。