まいばすけっとの魅力

講談社マネー現代の安すぎて逆に怖い… コンビニキラー「まいばすけっと」の驚愕のカラクリ という記事、なるほどと思う部分もある反面、違和感も感じる。これは、記事の著者がコンビニ的な利用を想定しており、それゆえに「激安」というところを前面に出しすぎているためだろう。

実のところ、まいばすけっとの価格はイオン系スーパーとしては標準的、あるいはちょい高くらいである。記事中ではプライベートブランド・トップバリュの58円(税抜)のドリンク(500mlでまいばすけっと限定商品)が挙げられているが、他のイオン系スーパーではちょっと大きい525mlのものが58円、緑茶、濃い緑茶、ウーロン茶、麦茶に至っては525mlで48円である。まいばすけっとが安いというより、コンビニがその性格上割高なのだ。

私自身毎日一回、多い日は2~3回まいばすけっとで買い物をするヘビーユーザーであり、この前10店舗ほど回って色々な知見を得たのでまとめてみようと思った次第。

1. まいばすけっととは

まいばすけっとは東京23区[1]、横浜市[2]、川崎市[3]を中心に展開するイオングループの小型食品スーパーである[4]。都市部のコンビニと同様、マンションの1階スペースに出店することが多く、売り場広さもコンビニ並みの50平方メートル~100平方メートル超程度である。都市部コンビニと同様駐車場は原則なく[5]、お客さんは徒歩かせいぜい自転車で店を訪れる。

基本的に住宅街にあるスーパーであり、地域によっては200メートル以内のところに2つ店舗があるなどコンビニ並みの大量出店を行っている。後述するが地域によってはコンビニと需要がかぶり、コンビニのメリットである深夜営業が強みとならず(深夜活動する住民が少ない)、価格差でコンビニを撤退に追い込むケースもある。

似たような小型スーパーとしてはリコス[6]マルエツ系列のマルエツ プチ、ローソン系列のローソンストア100などがある。

2. 基本は食品スーパー

コンビニは様々なサービスを24時間営業で提供しており、それ故に割高ではある。これに対してまいばすけっとはあくまでも食品スーパーであり、他にはたばこ、ATM、必要最低限の生活雑貨くらいである[7]。コンビニのように公共料金の支払い、切手、複合機サービス、宅配便、雑誌・書籍類などはやっていない。店内調理も行っていないので[8]レジカウンターに中華まん、揚げ物類、おでんの保温容器も無い。コンビニではなぜか入口近くに配置されることの多いコスメ・ヘアスタイリング系商品も扱っていない。

代わりに重視しているのは野菜・肉等の生鮮食品群であり、確認したすべての店舗で(一般的なスーパーと同様)野菜類が入口付近を占有している。野菜コーナーに隣接して肉・魚類、納豆や豆腐などの冷蔵加工食品群が陳列されている。このことから、まいばすけっとのメインターゲットは料理をする世帯住民、特にファミリー層であろう。アイス類もコンビニとは違いセット商品の比重が高い。醤油や料理酒、食用油などもコンビニとは違い1リットルサイズのファミリータイプが用意されている。インスタント麺や生活雑貨類についてはコンビニと大差ない。

冷蔵・冷凍什器は売り場スペース外周に沿って配置するのが基本である、という点についてはコンビニもまいばすけっとも同じ。ただし、コンビニでは3面(方形の売り場スペースの場合)の外周のうち1面をレジカウンターが占有し、歩道側のガラス面はショーケース的に雑誌等のスペースとなるため使えるのが実質2面である。一方まいばすけっとではレジカウンターはコンビニよりもコンパクト[9]であり、雑誌販売も行っていないため3面を冷蔵・冷凍什器に割り当てることが可能である[10]。さらにそれだけでは足らず、壁際通路の反対側に冷蔵什器を追加している。

なお、缶やペットボトルのドリンク類は背後から補充するため、これら什器の裏側にバックヤードがある(したがってこれら什器は壁側にしか置けない)というのはコンビニもまいばすけっとも同じである。

3. 割り切った商品ラインナップ

限られた売り場スペースで食品スーパーを運営する必要があるため、提供される商品のラインナップは非常に絞られている。例えば、弁当・惣菜についてはコンビニや、店内加工スペースのあるスーパーよりかなり見劣りする。メインターゲットがファミリー層なのでそこは勝負所ではないのだろう。肉・魚類についてもブロック肉は扱わず、刺身の種類も少ない。ある程度凝ったものを作りたければ普通のスーパーを利用してください、ということなのだろう。

前述のようにまいばすけっとは都市部の住宅地に出店している[11]が、他の立地条件は店舗ごとに様々であり、周囲にスーパーの無い店舗もあれば、他のスーパーのすぐそばに出店したり、笹塚駅前[12]や世田谷区池尻三丁目[13]等のスーパー激戦区に出店していたりする場合もある。そして、各店舗は立地条件に合わせて商品ラインナップの取捨選択を行っているようだ。例えば隣接するスーパーが高級店で冷凍食品が弱い場合は冷凍食品に力をいれる、などだ。「駅前スーパーで買いそびれた食品の買い足し」「かさばる、重い商品のみまいばすけっとを利用」「遠くの駅前スーパーまで行くのがめんどくさい」「夜遅くになったので駅前スーパーは閉店間近で総菜・弁当類が売り切れてしまう」「スーパーの混雑が面倒なのでさっと買えるほうがいい」など立地・近隣店舗が取りこぼしている客に合わせて適切な商品ラインナップを用意する、というのもまいばすけっと各店舗の生存戦略なのだろう。

他のミニスーパーと比べると、リコスやローソンストア100はまいばすけっとの大型店に比較的近い。ただ、リコスは通常のスーパーから離れた場所に出店し、競合を避ける傾向があるようだ(ローソンストア100も1店舗しか確認していないが同様)。マルエツプチは商品ラインナップも幅広くキャッシュレジの数も多く、より通常スーパーに近い形態である(刺身や弁当・総菜系も充実している)。

まいばすけっとで特筆すべき点はおつまみ類の豊富さ(小型店舗としては)だろう。日本酒やワイン(1000円以下のバリュー商品ばかりだが)、焼酎類などもあり晩酌も重要なターゲットなのだろう。個人的にはフルタ製菓リスカミスターイトウといった中堅菓子メーカーの製品を置いてある点を評価したい(個人的にはミスターイトウのいちごタルト、ブルーベリータルトがお気に入り)。

まいばすけっとの出店が23区、川崎、横浜中心にとどめているのも、自家用車の保有率が高く道路が整備されている郊外では近さが評価されにくく、商品ラインナップの狭さのため郊外型スーパーに勝てない、という点もあるように思える。

4. イオングループならではの価格競争力

上記のように割り切った商品ラインナップだが他のスーパー、コンビニと勝負できているのはやはりイオングループならではの価格競争力だろう。基本的にはイオン価格であり、価格だけなら通常のスーパーとも勝負できてしまう。品質について辛口の声もあるが、プライベートブランドであるトップバリュを使えるというのはやはり大きい(そこまで高品質にこだわらない客も多いのだ。自分含めて)。

冷たいお茶はコンビニがプライベートブランドで600ml100円(税込)なので、トップバリュの500ml58円(税抜)というのは確かに魅力的だ。

(2022/8/20追記)

さらにイオングループの一員であるため支払方法によってはWAONポイント(まいばすけっとでは「まいばすポイント」と称しているが同じもの)が貯まる。ポイント還元率は以下の通り。

  • 通常ポイント(現金・イオンカード・WAON払い・AEON Payのみ): 会計200円ごとに1ポイント

  • 特定商品(トップバリュブランド以外の商品、頻繁に変わる)購入でつくボーナスポイント(現金・イオンクレジットカード・WAON払い・AEON Payのみ): おおよそ価格の10%

  • イオンカード・WAON払い・AEON Pay使用によるポイント: 会計200円ごとに1ポイント

  • イオンカードセレクト[14]によるWAONチャージ: 200円ごとに1ポイント

おそらく最もお得になるのがイオンカードセレクトでチャージしてWAON払いということになる。オートチャージもあるため、WAON残高を気にしなくても済むという点も魅力だ。ただし、イオン銀行口座に定期的に入金しなくてはならないので、イオン銀行口座を給与振込口座として使える、他行宛振込手数料が一定回数無料となる銀行口座がメイン口座である、イオン銀行やみずほ銀行のATM[15]に定期的に通うことが負担とならない人でないと不便ではある。

WAON払いについても、チャージできる環境が身近でないと不便ではある。主なWAONチャージ方法は以下の通り

  • 店頭で現金からチャージ(まいばすけっとは未対応。ローソン・ファミリーマートは対応)

  • イオン銀行ATMで現金、イオンカードからチャージ

  • イオンカードセレクトなど一部クレジットカード[16]でオートチャージ

  • スマホアプリでチャージ(Androidは要イオンカード)

  • PCでチャージ(要ICカードリーダー)

オートチャージ以外で便利なのはやはりイオンカード+イオン銀行ATMだろうか。イオン銀行ATMのある店舗が近くにあることが条件だが。

(追記終わり)

5. 絶妙な開店時間

まいばすけっとの開店時刻は朝7時又は8時、閉店時刻は23時又は24時。朝起きて夜寝る人がメイン顧客なので需要の低い深夜早朝は捨て、通常のスーパーではカバーできないサラリーマンの出勤前やちょっと遅くなった帰宅時の需要を確保できている。

ちなみに他のミニスーパーの場合、リコスとマルエツプチは通常のスーパー並みから24時間営業まで様々、ローソンストア100は基本24時間営業である。

6. まとめ

以上のように、まいばすけっとは、

  • コンビニ並みに近い距離感

  • 立地条件に合わせて取捨選択を行った商品ラインナップ

  • コンビニに対しては圧倒的であり、通常のスーパーとも勝負になる価格

  • 通常のスーパーが取りこぼしている時間帯の営業

の合わせ技で近隣(徒歩200メートル圏内)のファミリー層を中心とした料理をする世帯の需要を的確にカバーするビジネスモデルなのだろう、というのが自分なりの結論。

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