年末の新球場ネタまとめ

年末に掛けて 平野市議[archive]が4つも新球場関連のコラムを書いていたり、2chで「今回の アスリートマガジン はすごくアレだ」という話が出ていたりと慌ただしかったわけだが、取り合えずまとめてみよう。半年くらいぶりにアスリート買ったよ。

まずは平野市議。 (NO.224)2007年12月20日[archive]『都心活性化と新球場について』より。

私は、これまで、永続的な球団経営の検証なくして、新球場の建設の議論は到底できるはずはないことを言ってきました。しかし、行政は全く対応してこなかったわけです。それが、新球場建設に着工された現在でも、これから協議していきたいというようなことでは、本末転倒であるというしかありません。

永続的な球団経営の検証なんて出来っこないでしょ。広島はプロ野球の興行が成立するギリギリの規模の都市なわけで、カープにはそれなりに経営改善のアイディアがあるだろうけど、それがうまくいくかなんて検証できるわけは無い。ま、この新球場はもともとカープが提案したもので、カープはこの新球場を「90億の予算内では売上増がもっとも狙える設備」と判断していることは間違いない。そのあたりに、外野があれこれいってもしょうがないような気もする。

入場するための新球場までのアクセスは、基本的には徒歩なのです。広島駅から新球場までの距離にして約1km~800mを車いすでの移動になるわけです。約800mと言いますと、紙屋町「そごう」百貨店前から広島市役所くらいまでの距離だと思いますが、それを移動しなければならないわけですので、身障者や高齢者の方にとっては大変厳しいのではないかと思われます。

ええと、実施設計の図面を見ればわかりますが、新球場には障害者用の駐車場が用意してあって、なおかつその側にはエレベータの入口があるわけです。また、エレベータの増設がきまり、一階正面入口からもエレベータを使えるようになった。歩いていくのが面倒、大変という人向きにはシャトルバスを球団が用意する、っていう手もあるわけで。新幹線口から迂回すれば大洲通りの渋滞も避けられるし。シャトルバスの運営はロッテ(京成バス)がずっと前からやってるわけで、路線バス王国の広島でできないなんてことはないでしょう。

また、新球場ではソフトボールや少年野球が出来ない点について、平野市議は以下のように述べている。

子どもたちの小さな、しかし、大切な夢をどのように捉えているのでしょうか。私たちが将来の夢を託す青少年の気持ちをも切り捨てるお考えでしょうか。青少年の健全な育成を願う全市民、県民の心を新球場は奪ってしまうと言っても決して言い過ぎにはならないと思うのですが、皆さんはいかがお感じでしょうか。

正直、プロ野球、アマ野球(中学生以上)、少年野球、ソフトボールはそれぞれ求められる機能が大きくことなり、これらを同じ球場でやるべきじゃない。少年野球は通常のアマ使用よりもさらに安全であるべきだし(例えば、アメリカの少年野球専用球場はベンチとグランドがフェンスで区切られており、ファウルボールがベンチにとびこまないようになっている)、ソフトボールグラウンドはマウンドがないほうがよい。市民球場はスタンドを縮小し、さらに昇降式マウンドを追加してアマ専用として存続させればよいわけですよ。ついでに中央公園を改装して、アマ向けの多目的芝生グランド(隅に野球やソフトボール用のクレイ部分を作って、フットボール/野球兼用としたグラウンド。 例えばこんなやつ )を作ればなおよし。この程度なら大してお金もかからないだろうしね。

え? 150万の集客施設? 150万はまず無理だろうけど、アマスポーツの動員力って結構馬鹿にならない。高校野球の予選でも結構お客さんはいるしね。それに、アマの試合って、プロではものすごくお金のかかる一等席で観戦できるんで、「気軽にいける場所にあるアマ用グラウンド」ってスポーツ振興にはかなり大事。てことで、成功の目算のたたないエンタメ施設なんて作るより、アマスポ用のスポーツ公園にした方がよっぽどいいと思うぞ。

(NO.225)2007年12月26日[archive]『現球場跡地の利用について(その1)~財政問題~』 では、市民球場跡地に付いて以下のように述べている。

一般的に、土地の価値は地価と使用料金で計るのが常識だと思います。小額の地代しか払わなくて済むような施策に、多くの人が恒常的に集まって来る夢のような施策はないはずです。

また、恒常的にリピーターが生じない施策では、広島市の中心市街地の活性化に繋げることは到底できないのです。球場の移転も秋葉市長の個人的な嗜好であるなら、現球場跡地の活用法も秋葉市長の個人的な「エゴ」と夢でしかないのではないでしょうか。

いや、市民球場の土地は国有地なんで、地代は商業利用かどうかとか、売上げとかによって決まるものなんで、地代と集客は必ずしも一致しないのですが。地元が希望しているのはあくまでも『集客』そのものであって、それが有料利用でなければいけない理由はないわけだから(ていうか、へたに色気を出したら失敗します。 フェスティバルゲート のようにね)、金をあまり掛けずに、気軽に非商業施設を作る、ってのが一番正解じゃないかな。上でも書いたけど、この土地にアマスポ用の施設を作れば間違いなく恒常的なリピーターが出てくると思うんだけど。

まあ、2つの跡地利用案のどちらもダメぽ、ってのには同意。てか、「議会のみなさんから意見が出てきたので、やっぱり凍結し、当分市民球場は残します」っ方向に誘導するのが市長の狙いじゃないかね。なんか、市長と対立してる議員の人達は、その実、市長の望む通りの行動をとっているような気もしないでもない。

続いて、 (NO.226)2007年12月27日[archive]『現球場跡地の利用について(その2)~開設50年の歴史~』より

『厚生年金・国民年金積立金還元融資施設―広島市民球場』とあります。今日、国全体を揺るがしている年金の還元融資施設であることを明示しているものでした。この厚生年金・国民年金積立金還元融資は、広島市が現在のスコアーボードと内野に増設した急勾配のため評判の悪いスタンドの建設のためのものであったと聞いております。

この還元融資金もカープ責任の部分は完済されているようですが、広島市の責任の部分については、本年度、平成19年度に返済しなければならない残金が1億8千万円もあるようです。つまり、秋葉市長は、年金の還元融資の返済が完全に済まないうちから、球場移転を計画されていたということになるわけです。

新球場を建設するために、現市民球場を取り壊してしまう。現象的には、単にそれだけかもしれません。しかし、市民の皆さんに愛され続けている市民球場は、広島市にとって戦後復興の歴史的にも重要な施設であり、また、市民の税金だけではなく、国中の人々の大切な年金の融資を受けて出来上がっていたことを市民の皆さんにも知っておいてほしいのです。そして、国民の大切な財産である年金を無駄に使ったと言われかねないようにしてもらいたいものだと思います。

あの、球場移転って秋葉市長が就任するずっと前の1995年頃から計画されており、そのことは 市議会の会議録 にもきちんと記録されているのですが。それに、平野氏はかつて市民球場を完全に壊してしまう立て替え案を 自ら提案し[archive]ていたのですが、これは間違いであり、現地立て替えなどやってはいけないし、財界が主張している「エンターテイメント性の高い施設」などもっての他であり、市民球場を存続させるべきである、というのが平野氏の考えなのですね。私はこの平野氏の提案に全面的に同意します。やっぱり新球場ができたとしても、市民球場は残すべきですよね。カープが出ていけば地代もほとんど払わなくて済むようになりますし。

最後に (NO.227)2007年12月28日[archive]『現球場跡地の利用について(その3) ~モニュメントの行方とインフラ整備~』から。

広島市は、この「勝鯉の森」をどのような形で残すのでしょうか。それとも、市民の誇りでもあるカープの栄光の歴史をも取り壊すつもりなのでしょうか。この問題ひとつにしても、広島市は明確な方針も理念も何もないのが現在の姿なのです。

いや、普通にヤード跡地に移転するでしょ。

広島市の場合、貨物ヤード跡地に新球場を建設する思いが、初めから秋葉市長の頭の中にあったのであれば、仙台と同じ「ダイヤモンドシティ」が必要とした軌道系交通のJR「天神川駅」を民間デベロッパーであるダイヤモンドシティだけに設置・施行をさせず、新球場とダイヤモンドシティの両方に折り合いのいい場所へ、金銭面を含み、共同で設置するべきであったと思います。

どうやって? あのあたり、山陽本線の上りと下りの線路が離れていて、しかも南の線路は土手の上だったような気がするのですが、あんなところに駅が作れるとは思えない。というか、天神川がぎりぎり新駅可能な位置ではないかと。

ただ目先の、世論受けする事案だけを、無差別に、しかも瞬間的に思いついたまま飛びつき

というのは、むしろ平野氏に当てはまってしまうような気がする。少なくとも新球場に付いては、秋葉市長は「駅前再開発の核となる新球場を、出費を出来る限り抑えつつ遂行する」という点において全然ぶれていない。

続いてアスリートマガジン。巻頭の二宮清純コラムがイカす。まあ内容は 下前雄氏の提言[archive] の焼直しなのだが。経営面での改善が必要、てのには同位なのだが、その提案がことごとくダメダメなのが問題だ。二宮氏は「増資しろ」といっているが、なんで増資が必要なのか(どこにどんだけ金をつぎこめば、年間の売りあげをどんだけ伸ばせるのか)てことには全然触れていない。そこが一番肝心なとこでしょうに。ようするに、まとまったお金をつぎこめば売上げを伸ばせる、ていう目算があるからこそ増資をする意味があるのであって、その見当がつかなければ増資をする意味なんてないし、株式の引き取り手がでないような気がするのだが。

この手の「提案」とやらによくあるパターンとして「交渉ごとは相手の都合が影響する」という一点が欠落している、という問題がある。株式を発行して資金を確保するなら、「いくら必要?」「お金を出すだけのメリットは?」てのは当然問われるわけでさ。二宮氏にしても、元ネタの下前氏にしても、この手の議論をするならせめて今のカープの収入内訳の概要、とかプロスポーツ全般の経営の事例とか、それくらい抑えてほしいものだが(御二方がこのあたりを理解しているとは到底思えない)。

つづいて、田辺一球氏の"Save My Carp"。「ところがこのイラストが発表される少し前、広島市は巨大スロープとはまったく別の脆弱なスロープのデザインを発表しました。それがイラストでは何ともあいまい描かれているのがよく分かります。」との主張ですが、このイラスト(イラスト2)は、市が発表した動画の一こまで、スロープなんか描かれていません。同じ動画で、もう少し遠くの視点からの 画像 を用意しましたので確認ください。スロープなんてないでしょ。

それではどうしてこんなことになったのか。答えはひとつ。絶対に無理な「90億円」で新球場を造ることに秋葉市長が個室した結果「90億円で 造れるところだけ造る」方針が平然と認められたからです。

それではなぜ、そうまでして「90億円」にこだわる必要があったのか? これも簡単です。05年夏に地元財界や現在地建て替えのつもりでたる募金した市民、ファンの気持ちを裏切ってまで建設場所をヤード跡地に変更した広島市の主張の軸になっていたのが「09年春まで完成の厳守と、現在地(この時期、現在地建て替えには少なくとも134億円かかると試算された。これは倉敷マスカットスタジアムや松山坊っちゃんスタジアムと同額で至極あたりまえの数字)より格安の90億でヤード跡地ならできるし敷地が広いので自在な設計が可能で付帯施設を盛り込むのも容易」というものでした。

それではなぜ、そうまでして広島市は球場をヤード跡地に移そうとしたのか。これも簡単。現在地での建て替えの場合、カープ球団にも相当の負担がのしかかります。本来ならそのあたりのことを広島市と球団側でしっかりと話し合って、行政が積極的に支援してこそ市民球団なのですが、その手間を嫌ったこと、そして最初から市民球団の跡地に公園ありきのこれまた秋葉市長の偽装工作があったからにほかなりません。

えーと。全然見当違いだと思います。2000年頃から始まる一連の流れを見る限り、市は最初っからメリットの存在しない(市民球場を使いつづける場合と比べて現地建て替えはうん10億の市税を注入するだけのモノ=税収増が期待できる?そんなわけないよね)現地建て替えをやるつもりはなく、ヤード跡地に建てる場合でも、周辺整備込で70億くらいを損益分岐点と考えていたふしがある。だから、予想外の出費が必要となったエンティアムをつぶしにかかったわけで。

それに、現地建て替えの134億ってのは、 市の2005年1月14日資料[archive] によれば、土地の制約によって必然的に生じる増額分であって、球場そのもののレベルはどっちも変わらない(田辺氏の言葉を借りるなら「到底世界に誇れない」)レベルなのですが。それから、行政が支援してって言いますが、それだとますますコストアップになってしまい、ますます市の言い分が正しい、ということになりますが。

まあ、カープ自身もヤード跡地をずーっとプッシュしてたわけで、市、カープ共に意見は一致していたのだから、話合いもクソもないと思いますがね。

田辺氏の今回のコラムは、「秋葉市長が市民球場跡地に公園を造りたいからヤード跡地新球場を推進した」と読めてしまうのですが、逆でしょう。まず駅前再開発の呼び水として有効な新球場をヤード跡地に造り、市民球場跡地如きに金を使いたくないから必然的に公園をプッシュする形になった、と。

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