これはひどい

広島新球場のデザインコンペ終了に伴い、田辺一球氏が携帯HA(リンク切れ URL: http://www.sanfield.net/athlete/keitai/index.html )にコメント(2006/9/29)を残しており、2ちゃんねるにも転載されているのだが、その内容がひどい。秋葉市長を批判するのは別にいいのだが、事実誤認があったり、ミスリードを狙ってるとしか思えない箇所もある。批判するにもやりかたってもんがあるでしょうに。

2006/10/2追記あり

新球場の設計コンペ最優秀案が決まった。新聞に出ない問題点をあげる。栄えある最優秀案内といきたいところだが作品を出した 環境デザイン研究所(都内港区)は前回コンペで失格になったうちのひとつ。前回は日建設計、鹿島建設(鹿島の談合で資格を失った) 三井不動産らとタッグを組んでいた。日建設計は球場問題の最大の曲者だ。広島市とともに現在地建て替え案を強引に葬り去り市議会 などから総攻撃されたいきさつがある。今回は環境デザイン研究所だけの名前しかないが、裏に意図的に隠れていれば大問題だ。 なぜそう感じるか。答えは簡単。今回の最優秀作品は以前のエンティアム案に酷似している。エンティアム案は日建設計と鹿島建設、 それに米国HOKが生み出した。HOKは今回、別のグループと出品しベスト4にも残らなかった。

これでもし鹿島建設が施工業者に決まるようなことがあれば形を変えた官製談合だ。鹿島が度重なる談合で指名停止処分を受け、 その期間が明けるのを待っていたことになるからだ。鹿島建設についてはもうかなり前に「最後は鹿島と決まっているのですから」 というメールをおそらく市内部の方から頂いた。広島市議会の宮本、平野両議員のHPを熟読すれば理解を深めることができる。

エンティアムの時の話が生きているのだ。ずっとヤード球場に関わっているのだから短いプレゼン準備期間しかない他の案を圧倒する 内容を提示できて当然だ。そしてこの案はとても90億円ではできない。だが広島市役所に詰める若い担当記者の大半はこんな基本的な ことにさえ気付いていない。このまま行けばまた市議会で紛糾する。市議会は資金問題を徹底的に追及するだろう。まさに絵に描いた 餅状態。前回市長選の前とまったく同じである。それにしても、何でもかんでも外部招へいの際は早稲田で決め、の早稲田大数学者、 秋葉市長が選んだ選考委員会委員長まで早稲田とは。しかも選定理由にまるで説得力がない。出来レースはコンペの精神を冒とくしている。

まず、今回選ばれた案だが、エンティアム案に酷似している? 似てるのは「アメリカ風」ってとこだけで特に似てるとは思わないけど。

最初のエンティアム案はカムデンヤードに近い。外野フェンスは直線で形成されているし、外野のファウルエリアも広め。

コンペ時のエンティアム案は、一塁側二階席がそのまま外野まで延びているデザイン。同じ外野二階席といっても、今回の案(1), (2)のものとは似てもにつかない。内野二階席のラインも、エンティアム案はほぼ直線的なのに対し、今回はやや膨らみを持たせている。照明も、エンティアム案は内野側が屋根のさらに奥にある商業施設のそのまた奥から高く伸びる小さめの照明をたくさん並べ、外野は横長タイプの照明灯。対して、今回の案は内野からライトにかけては屋根の先端に乗ってる横長タイプで、レフトにY字形の照明塔を二つ置いたもの。外野フェンスの形状も、エンティアム案が外野フェンスを直線で構成しているが今回の案ではライトからセンターまでは曲線でレフト側のみが直線的になっている。外野のファウルエリアの形も違う。ホーム−センターの方向も違う。どこを見て「酷似している」としているのか理解に苦しむ。

また、エンティアム案には、日建も、HOKも係わってはいない。エンティアム案の設計はNBBJだ[archive]

それに、「鹿島が度重なる談合で指名停止処分を受け、 その期間が明けるのを待っていたことになるからだ。」というのは時系列を無視している。まず、鹿島が指名停止となったのは、防衛庁の談合がらみであり「度重なる」では無い。その後、新たな談合発覚によって指名停止期間が延長されることになり、これをもって「度重なる談合」といっているのかもしれないが、指名停止の延長(2006/7/11)[archive]施工の入札期間が2007年6−9月に決まって[archive]から3ヶ月後の話だ。しかも、一旦は指名停止の延長により鹿島はこの入札すら不可能な状態になっている。この指名停止は7/24に解除されているが、これは他の自治体でも同様であることを付け加えておく(広島が新球場がらみで意図的に指名停止を解除したものでは無い、ということ)。指名停止開けは鹿島のみを対象としたものでは無い。鹿島を含む大手4社全てが対象だ。実際問題として、「プロが使える野球場」を施工できるだけの技術力を有しているのはいわゆるスーパーゼネコンといわれる大手五社(竹中、清水、鹿島、大林組、大成)のみであり、指名停止開けまで入札を伸ばさなければ、竹中以外に施工できる所がない、という状態だった。それに、市長はどちらかといえばなんとか竹中案を通そうとしていたようにも見えるのだが・・・

田辺氏は準備期間が長い鹿島が有利であることに不満があるようだが、ファンにとって何が問題なのだろうか。鹿島を意図的に外して準備期間の少ない(すなわち、出来の悪い)案が選ばれればよかったというのだろうか。それとも、コンペまでに時間を十分にとって完成がさらにおくれてもよかったのだろうか。新球場が駅前再開発と密接に絡んでいる以上、これ以上の遅れはデメリットにしかならないと思うのだが。

田辺氏は「90億ではできない」と主張している。しかし、今回の案は見たところ外野スタンドのライトからセンターまでは土盛りである(よく比較されるサンマリンスタジアム宮崎は外野もコンクリート構造)。また、図を見る限りではスコアボード(アストロビジョン)は、市民球場のものをそのまま移設して使うつもりのようだ。作り方次第で十分90億はいけると思うのだが。もし足りなくても、不足分をネーミングライツで充当する、というのも可能だろうし。ちなみに、インディアナポリスのVictory Field[archive](AAA級、1996年開場、固定席12500、外野芝生席に2〜3000人ほど収容可能)は規模が小さいとはいえ、二階席付きでわずか1800万ドル。

余談だが、市議会が球場の建設費について追求するとすれば、もっとも積極的に行うのは、おそらく反市長派の新政クラブ(田辺氏が熟読を勧めている平野氏や宮本氏がいる会派)だろう。しかし、新政クラブの平野氏は「市民が望むなら300億かけて(これは市債発行を意味するに等しい)も素晴らしい球場をつくるべきだ[archive]」と主張しており、今回の建築費について言えた義理じゃないと思うのだが。

早稲田大数学者のくだりはその前の「早稲田出身者をつかいたがる」ということのみを意味するのだろうが、誤解をあたえやすい表現ではある。市長は東大-MITで、早稲田大に在学していたことは無いのだから。(早稲田だけじゃなく、東大やMIT出身者も結構招聘してるんだけどね。前回のコンペの時は一人も早稲田関連の人がいない[archive]し。確認してみたけど、少なくとも、早稲田への在籍経験が経歴に入っている人はいなかった)

悪いけど、田辺氏は「広島市役所に詰める若い担当記者」をどうこう言えるレベルじゃ無い。少なくともこの問題については。


(2006/10/2追記)

もしかすると、田辺氏が「酷似している」と指摘したのは、これのことだろうか。[archive]確かに良く似ている。が、これはエンティアム案では無く、どちらかといえばエンティアムがぽしゃった後に鹿島とカープ、日建設計で考えた案では無いかと思う。

コメント(1)

  • 投稿者: うーむ
  • 投稿日時: 2006/10/01(日) 20:40[JST]

私もその記事を読みましたが・・・・
一体田辺氏の目的とは????でした。

球場を造りたいのか?
それとも秋葉市長を辞職させたいのか?
後者が本来の目的ならば、新球場の問題に政治を結びつけるんじゃねーよ。

それに、あそこまで言われるのは設計者にとってみれば、名誉毀損ものじゃないですか?
アスリートの購読を続けていましたが、止めようかと考えています・・・・・・・



Note

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