渡辺保裕のバンドッグス三部作を振り返る(2)熱球時代

ということで、まずは第一作「熱球時代」の紹介を。

概要

「熱球時代」は名門野球チーム「東京バンドッグス」の主砲・高千穂麦造(たかちほ・ばくぞう)を主人公とする全8話・単行本1巻の作品であり。各2話が前後編となっており、4つのエピソードから構成されている。

各エピソードには他チームのライバルや同僚選手にスポットライトが当てられ、主人公との関わりを介して彼らの活躍が描かれる。

なお、各エピソードは掲載順の時系列であるとは限らない(後述)。

リーグ構成

本作においてバンドッグスが所属するリーグは6チーム構成となっている。第1話に「同リーグ」という表記が登場することから別のリーグも存在するようだ。本リーグに所属するチームは以下の通り。

東京バンドッグス

東京を本拠地とする名門チーム(巨人に相当)。1956年設立。昨シーズンまでの4年で3回の日本一。

帽子・ヘルメットの色は赤でロゴはところどころ牙のように尖った大文字のB。ホームユニフォームは藤井寺時代の近鉄と同じく白地で腕の部分が赤いもの(作者の渡辺氏は近鉄ファン)で、中央に"BANDOGS"のロゴ。ビジターは全身色付き(色不明)で肩は別の色。過去のシーズンにはズボンは白、上着は色付きで中央に白抜きの"TOKYO"ロゴのビジターユニフォームだった時期も。

本拠地スタジアムはシアトルのセーフコフィールドに似たバンドッグパーク。

西日本エンターティナーズ

地方の弱小球団(第1・2話のエピソードでは前年度最下位)。帽子は黒でロゴは丸みをもたせた大文字のE(εに類似)。ユニフォームはホームがピンストライプで左胸に上記ロゴ。ビジターは全身グレーで中央に"NISHI(改行)NIPPON"

本拠地スタジアムは登場せず。

京都スターズ

帽子・ヘルメットの色は白でロゴは赤い星。ユニフォームはホームが左胸に赤い星、その中に京都タワー風にデザインされた「京」の文字。ビジターは上が色付き(色不明)で中央に白抜きで"KYOTO"。ホーム・ビジターともズボンは白地。

本拠地スタジアムはピッツバーグのPNCパークに似た京都球場(宮大工によって作られた木造・ナイター設備なしの球場)。

横浜ホエールズ

帽子は色付きでロゴはYとWを縦に組み合わせた白抜きのもの(第3話)。過去のシーズンでは色付きのヘルメットに白抜きのYロゴだったことも。ホームユニフォームは全身白地で左胸に前述のYWロゴ。ビジターユニフォームは上がカラー地(色不明)で左胸に白抜きで同じロゴ(過去は中央に色付きの文字で"YOKOHAMA"だった時期もあり)、下は白地。キャッチャー用ヘルメット及びアンダーシャツの色は紫。

本拠地スタジアムは名称不明だが横浜スタジアム風。

東日本キャピタルズ

本拠地はおそらく仙台[1]。スタジアムは神宮に似る(但し内野はクレー)。ユニフォーム(ホーム)は7話に1コマ、それも上半身背中側のみしか描かれていないが、ピンストライプ。ヘルメットは正面が白、それ以外(鍔含む)は色付きというクラウンライターライオンズに似たデザイン。

沖縄オリオンズ

ほぼ名前のみで、ホームスタジアムは紹介されていない。京都スターズとの対戦(沖縄ホーム)が第3話に1コマ、バンドッグスとの対戦(沖縄ビジター)が第7話に1コマずつ描かれているのみである。ホームユニフォームは全身白地、ビジターは全身色付き(おそらくグレー)。

主要登場人物

高千穂 麦造(たかちほ ばくぞう)

主人公。背番号8。東京バンドッグスの主砲・三塁手で球界を代表する右バッター。1〜2話のエピソードでは入団6年目。3〜4話のエピソードでは27歳。入団2〜5年目のシーズンに4年連続本塁打王を含む5度のタイトル(残り一つは2年目の首位打者)[2]

本来は味付け海苔のような太眉だが毎日の手入れにより細眉となっている。一人称は「ボク」。

米良 吾妻(めら あずま)

1〜2話「アスピリンをもう一度」のライバルキャラ。背番号43。西日本に所属する「暁の超特急」の異名を持つ速球ピッチャー。高千穂にプロ野球選手の心がけを教えた師匠でもある。

前年までの20シーズンの間バンドッグスのエースピッチャーだったが成績不振と若手機用の方針により戦力外となり、引退を決意した。その後高千穂の訴えに応じて引退を翻して移籍。今シーズンは9勝負けなしと復活した状態でバンドッグスと対戦。

本気になった時の口癖は「36…36.5…37…37.5! 38!! 39度ッ!! 体温急上昇ッ」でこの口癖は高千穂に受け継がれた。自らが認めた強打者に対してのみ、本気の豪速球「アスピリン」で仕留める。

モデルは巨人→中日→オリックスの西本聖か。

蕪木 平(かぶらぎ たいら)

3〜4話「熱き血潮のマーダースライド」のライバルキャラ。29歳。背番号17。京都のセンター。入団11年目或いは12年目[3]。内野手をふっとばす「マーダースライド」が代名詞。右投のスイッチヒッターで通算成績は打率.350、本塁打129、盗塁608という俊足強打の打者。

名前の通りモデルは大リーグのタイ・カッブ。蕪木と同様俊足強打かつラフプレーも辞さないプレースタイルの選手だった。顔もだいたい同じ。ただしカッブは左打者である。

本編ではヘルメットは左右それぞれに耳あてのあるものを1つずつ使い分けているが、表紙では両方に耳あてのあるものを使っている。

人見 瞳

3〜8話にかけてバンドッグスの監督として登場。背番号30。第3話の時点で41歳。青年監督だった頃の原辰徳に似ている。名字の読みは「ひとみ」

寺谷 真二郎

京都の監督。第3話の時点で45歳。背番号30。蕪木入団時の京都の主砲。名字の読みは「てらたに」。現役時代の背番号は3。蕪木との練習中にスライディングを受けて負傷(おそらくそのまま引退)。

是川 豊丸

5〜6話「ハマの貯金箱」のライバルキャラ。名字の読みは「これかわ」。プロ入り以来横浜の正捕手を務める。27歳。背番号4。成績は平凡だが「功は全て自分の手柄、失敗は全て他人になすりつけ」る徹底した査定至上主義により年俸5億。その結果ついたあだ名は「ハマの貯金箱」。

実は社会人野球の名門・是川製作所の御曹司であり、銭ゲバなのも会社再建の資金を貯めるためである。

あだ名の元ネタは元巨人・森昌彦(祇晶)の「岐阜の貯金箱」か。

佐藤 ユタカ

7〜8話「戦慄のGMと恐怖のルーキー」のメインキャラ。バンドッグスの二塁手で背番号67。右投右打。高卒ルーキーで攻守に不振が続くにも関わらずGMの意向で二塁のスタメン固定、どころか勝ちがかかった終盤でも代打を出されないのでフルイニング強要。

天才的な記憶力の持ち主で、過去の試合の全てのシチュエーションを記憶している。また、高校時代の出塁率は高千穂をも上回り、GMはその点を買っていた。

不振はイップスによるものであり、高千穂のアドバイスによりそれを克服した後の試合では大活躍する。

関 武蔵

東京バンドッグスの左腕リリーフピッチャー。

黒月 剣(くろつき けん)

(7〜8話時点で)今シーズンからのバンドッグスのGM。選手を見る目は確かで、彼の責任で取った選手13人中12人[4]は年俸が契約金を超えている(残り一人が佐藤ユタカ)[5]

蟹江(かにえ)

西日本の右腕クローザー。背番号38。モデルは元メジャーのエリック・ガニエ。

時系列

全てのエピソードがパラレルワールドの関係にある、とも解釈できるがそれでは面白くないので各エピソードは同一の作品世界であるものとして考えると以下のように、1〜2話→5〜6話→3〜4話→7〜8話という時系列となる。

  1. 1〜2話の試合のあったのは高千穂6年目のシーズン。試合のあった時期は米良が9勝0敗であることからおそらく10節、つまり6月以降。

  2. この試合以降、高千穂は「体温急上昇ッ」を使うようになる。

  3. この年に監督は変わったばかりだが、3話以降に登場した人見ではなさそう。

  4. 1〜2話と3話以降ではホームユニフォームのデザインが微妙に違う(3話以降のものは左肩に"TOKYO"の文字が入っている)。

  5. 3〜4話の試合があったのは5月中頃。高千穂は「体温急上昇ッ」を使っているので1〜2話の翌シーズン以降。

  6. 5月9日ごろ[6]の時点で高千穂は27歳。大卒だとすると計算が合わない(大卒なら6年目の4月時に27歳になるため)ので社会人出身、この試合は7年目シーズンか。ということは1〜2話の監督は1シーズンで辞めて人見監督に交代した、ということになる。

  7. 5〜6話は6〜7節で5月頭あたり。ライバルである是川は27歳で高千穂にタメ口であることから、3〜4話と同一シーズンと思われる[7]

  8. 7〜8話のシーズンは、開幕からルーキー佐藤ユタカが二塁でフルイニング出場を強いられいてる。一方3〜4話では佐藤以外の選手が二塁を守っている。このため、7〜8話は3〜4話よりも後のシーズン、つまり高千穂8年目以降である。

  9. 7〜8話の冒頭では佐藤はちょうど100打数。四死球や犠打・犠飛を考慮しても120打席・30試合程度。つまり5〜6節。

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Note

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