【マツダスタジアム】百条委員会の陳情についてちゃんと検証してみよう
- 公開日: 2012/10/19(金) 07:11[JST]
- 更新日: 2022/03/30(水) 20:43[JST]
10月13日に書いたものは断片的にしかツッコミを入れていないので、全面的に検証してみようと思う。なお、「3 基礎構造に重大な欠陥を持つ危険建物としての球場建設について」については、「とある事務屋の備忘録(リンク切れ URL: http://blogs.yahoo.co.jp/hiroshige1717/archive/2012/10/13)」さんが検証しているのでそちらを見ていただければ。なお、「とある事務屋の備忘録」さんによれば、陳情は受理されなかったとのこと。
では、百条委員会の陳情(リンク切れ URL: http://www.city.hiroshima.lg.jp/www/contents/1000000000002/1348647870737/index.html)について、以下にツッコミをいれてみる。
1(1) 作品公募の偽装疑惑
この新球場設計コンペにおいて、最終的に「当選作品」となった環境デザイン研究所の応募作品は、米国人デザイナー、ダン・ミース氏が意匠設計等の枢要な部分を担っていた。この人物に、秋葉市長は、平成12年秋の訪米視察時(10月)に会っており、以後の選定につながる大きな疑惑がある。
平成18年7月3日から7日までの間、ワシントンポスト紙記者による秋葉市長へのインタビュー取材が行われており、その時点で、アメリカの会社からの応募作品が市長の手元に届けられていた。応募提案された全20作品の中で、記事にある「アメリカの会社からの大リーグスタイルの応募提案」は、ダン・ミース氏が関与した作品番号4(環境デザイン研究所)以外にはない。
公開コンペは提案募集が公平に行われ、応募者による提案応募作品が公明、公正に審査を受け、優秀作品が選択されることが最も重要な要件であるが、新球場設計コンペでは、それが守られず、事前に選考作品が決まっており、官製談合と言えるものになっている。
これは、以前から平野市議等が主張してた「秋葉前市長はダン・ミースに利益供与しようとしてコンペを誘導しようとしたんだよ」説。
まず、上記引用部分の第2段落め。これはまったく意味のない主張だ。「記事」とは、2006年8月4日付けの"In Hiroshima, New Ballpark Proves a Tough Pitch"だと思われるが、この記事の中には秋葉前市長のインタビューに基づくと思われる文章はせいぜい"Like his Washington counterpart, Mayor Anthony A. Williams, Akiba believes a stadium would not only rejuvenate the struggling Carp, but also give Hiroshima an economic boost."って部分くらいじゃないだろうか。上記引用部分で語られている「アメリカの会社からの大リーグスタイルの応募提案」というのも秋葉前市長のコメントではなく、記者の見解を示したに過ぎない。陳情だけ読んでるとあたかも秋葉前市長が言外に環境デザイン案をプッシュしているように見えるけど。
加えて、10月13日の投稿でも書いたが、「アメリカの会社からの大リーグスタイルの応募提案」とはおそらく(当時盛んにアピールしていた)所謂アラップ案を指している。したがって、第2段落目の指摘は何ら意味を持たない。もう一つ付け加えるなら、「平成18年7月3日から7日」は応募作品の受付前だ(募集要項によれば「登録申し込み」の締切りが7月7日で、応募作品受付開始が8月24日)。
さて、引用部分における彼らの主張に対しては、下記の反証材料をもって反論したいと思う。
そもそも、ダン・ミース氏とほぼ同時期にカープが別のスタジアム案を提案している。
コンペに勝った環境デザイン研究所案は、2005年4月にカープが提案した球場案をベースにしている。
新球場に関するコンペは過去3回行われているが、そのうち2回(1回めと3回め)はカープがらみの案が選ばれている
1回目のコンペでは、ダン・ミース氏は当選したエンティアム案ではなく、対立候補だった三菱重工案に関与していた可能性が高い(2007年7月11日の投稿参照)。
2回めのコンペでは、カープが関与していた鹿島・環境デザイン研究所案が(防衛庁がらみの談合で)失格となり、なしくずし的に竹中工務店案が当選となったが、当時の新聞記事等から市は竹中案で進めようとしていた節がある。
1回めと3回めのコンペにおいて、カープが関与していた案の出来がダントツで優れていた。2回めのコンペについても、判明している3案(竹中案、鹿島・環境デザイン案、アラップ案)の中では、鹿島・環境デザイン案がダントツだろう。
つまり、秋葉前市長がダン・ミース氏に利益供与しようとしてたならなぜ1回めのコンペで三菱重工案を推さなかったのか。また、エンティアム案がポシャったときになぜ前市長は次点だった三菱重工案に舵を切ろうとしなかったのかの説明がつかない。新球場のテナントであるカープに便宜を図っていた、とする方がはるかに説明がつく。そのカープにしても、2回目のコンペでは(最終的にはカープの猛反対で再コンペとなったものの)カープにとっては不本意な竹中案で進めようとした節があり、必ずしもカープの思い通りに進んでいたとは言えない。
一番しっくりくる解答は「便宜を払ったとすればテナントである(新球場の土地代と建築費のうち80億円あまりを負担することになる)カープであるが、便宜を図るまでもなくカープが関与した案が問答無用で優れており(そりゃ2000年から研究してたカープがついてるんだから)、環境デザイン案は選ばれるべくして選ばれた」だろう。
1(2) 疑惑の選定プロセス
ごめん、これ何が言いたいのかさっぱり分からない。
応募要項等の規定に基づき適確に作品内容をチェックすれば、全応募作品20点の中に、第一次選考の場で選考対象とすべき作品は1点もない。
って断言してるけど、応募要項見直しても「第一次選考の場で選考対象とすべき作品は1点もない」と主張するに足るものは見つけられなかった。てか応募要項に大したこと書いてない。なお、応募要項はWeb Archiveから取得可能なので興味のある方はチェックしてみよう。
1(3) 秋葉市長による虚偽の選考結果の記者発表や議会答弁
市長は、「応募要項の要件を満たしている。」のほか、「カープの意見に記された要望をおおむね満足している。」と説明しているが、当選作品の設計計画図・設計説明書の記載内容(広島市作成の新球場設計コンペの公式記録書「広島市新球場設計提案競技記録(冊子及び付録CD-ROM)(以下「競技記録」という。)に収録」と「カープの意見」に記されているカープの要望内容とを照合すると、両者間に大きな違いがあり、会見での市長説明が虚偽であることは明らかである。
「カープの意見」てのは多分2回目のコンペのときに出たカープの竹中案に関する見解のことだと思うんだけど、この見解もWeb Archiveから入手できた。少なくともコンペ時の環境デザイン案は満足してると思う。←これじゃなくて、別にあるらしい。かあぷ屋さん本舗さんが電話で聞いていた。詳しくはかあぷ屋さん本舗さんを見ていただくとして、具体的な数値がある箇所を抜き出してみた。
一階内野席 16000席
外野席 8000~10000席
球場関係者室 広さ25000㎡を確保
ダッグアウト・ロッカー・監督室・ブルペン、バッテイング練習、トレーニング等の選手関連 計4000㎡
売店、レストラン等 3300㎡
記者席、放送席等 800㎡
グラウンド整備関連 600㎡
トイレ等 2000㎡
この「球場関係者室」というのは、2回目のコンペのカープ要望を見ると「プロ野球フランチャイズ球場としてふさわしいトイレ、飲食等売店、選手関係諸室を確保する。[カープ要望] 球場関係諸室については、25,000 ㎡程度を想定(観客席、コンコースを除く。階段、廊下の動線や機械室等のバックスペースも含む)」となっている。球場関係者室とは球場関係諸室の誤記で、トイレや飲食も含む、「観客席とコンコース以外のエリア」とも読み取れる。
一方、環境デザイン案のスペックは以下の通り。手計算なんで打ち間違いが有るかもしれないけどそこは御容赦。
一階内野席14000席
外野席9200席
選手関連諸室3500平方メートル
売店・レストラン3830平方メートル
記者席・放送席等マスコミ用諸室810平方メートル
グラウンド整備関連620平方メートル
トイレ2820平方メートル
球場関係諸室(全体面積-観客席・コンコース面積)24980平方メートル
一階内野席と選手関連諸室がちと足りないくらいで大体満足しているといえるのではないだろうか。
1(4) 当選決定後、市民・議会への公表、報告までの短期間のうちに行われている当選作品の改ざん(公文書偽造罪)疑惑
コンペでの発表内容と、後に公表された環境デザイン案が異なるという主張。どこが違うのか具体的に指摘されていないのでにんともかんとも。
2(1) 当選作品の提案内容(中略)が、その後(中略)大幅に縮小、変更されている。
環境デザイン案の延床面積55010平方メートルが、実施設計では39283平方メートルと減少され、これは別物だと言う主張。平野市議も以前主張していましたな。陳情ではこんなことを書いている。
広島市は、「応募作品の提案内容は、延べ床面積でおおむね4万平方メートルであり、5万5,010平方メートルと記されているのは応募者の錯誤による記載である。」旨、平成21年11月4日、市議会平成20年度決算特別委員会で、児玉委員の質問に対し答弁している。市の答弁は虚偽である。
この答弁の内容を確認したが、「環境デザイン案は(本来延床面積に含めない)観客席を延床面積に入れており、これを除けば延床面積は40000平方メートル程度」との発言を確認した。環境デザイン案の資料をみると、確かに観客席を延床面積に含めている。つまり、市の答弁は正しい。
なお、これをもって「環境デザイン案の延床面積はカープの要望を満たしていない」とするのも間違い。2回目のコンペで出た要望を確認する限り、カープは「観客席を含めた総面積として53000平方メートル」を要望しているものと考えられる。大体、環境デザイン案ってカープ案ベース(というか、カープが裏でバックアップしてたのは多分間違いない)なんだから、カープの要望を外した案になるはずがない。
2 (2) 広島市は、(中略)全体工事費90億円以内で(中略)完成させたと議会等で説明しているが、これは虚偽説明である疑惑
我々の調査では、支持くいの大量割愛によって、事業費を削減する一方、90億円の事業費の枠外で、次のような工事が別途発注されていることが判明した。
電光式得点表示板設備工事(6,400万円)
太陽光発電設備工事(7,500万円)
新球場敷地内場外トイレ新築工事(900万円)
本来広島市が施行すべきものを、カープ球団に負担させた工事も多数に上るとされる。(15億円~20億円との予測あり。)
結局、全体工事費は110~120億円とされ、秋葉市長の公言する90億円が虚偽額であったと考えられ、全体工事費説明そのものに大きな疑惑がある。
見せかけ上の全体工事費90億円が、正しく達成されたかのような誤解、錯誤をもたらしている。
いやさ、上の3つって当初の計画にはなくて後から追加されたものでしょ。トイレ以外は必須設備じゃないし。あと、カープ負担分ってプロの試合で必要になる部分の内装でしょう。普通の商業ビルでも内装は借り手が負担するのが普通だと思うのだが。